中国も「DINKS」急増 都市人口、農村超える
【北京=森安健】中国で経済発展に伴う都市化の波が人口構成に大きな変化を与えていることが分かった。生活費の上昇から「一人っ子政策」からさらに進んで子どもをつくらない共働き夫婦「ディンクス(DINKS)」が増え、若年人口が急減。昨年末時点で都市部の人口は初めて農村部を超え、サービス業など第3次産業従事者の比率が35%と第1次産業を上回った。改革開放から30年を経て中国社会が新たな段階に入りつつあることを印象づけた形だ。
中国国家統計局が今秋の指導部交代を前に人口状況の報告書をまとめ、10年前と比較した。総人口は2002年の12億8453万人から11年末時点で13億4735万人へと増加。そのうち0~14歳の「年少人口」は10年前から6610万人減り、全人口に占める割合は22.4%から16.5%に急低下。65歳以上の「老年人口」は2911万人増えた。
中国は人口抑制を狙い1979年から一組の夫婦に子どもを一人に限る「一人っ子政策」を導入しており若年人口の減少は織り込み済み。ただ65歳以上の比率9.1%は日本と比べなお低いものの、少子化は予想以上のペースで進んだ。原因は子どもをつくらない夫婦が増えていることだ。
国家統計局の調べでは一家庭当たりの平均人数が82年の4.41人から11年には3.02人まで縮小。都市部に限れば3人を割り、子どものいない家庭が一般的になりつつあるといえる。「ダブル・インカム・ノー・キッズ」を略したDINKSに漢字を当てた「丁克(ding ke)」の言葉も定着した。
背景には衣食住や教育費など都市部の生活コストが年々上がっている事情がある。北京市中心部のマンション価格は同市の平均年収の25倍前後。住宅ウェブサイト「捜房網」によると25%の家庭は月収の5割以上を住宅ローンに充てている。夫婦共働きで子どもを持たないライフスタイルを選ぶ層は01年に11万人だったが06年に60万人になったとの調査もある。
改革開放以来の経済成長を追い風とした都市化の進展で人口の移動も進んだ。都市部に住む人口が6億9079万人にのぼり、農村部の6億5656万人を初めて上回った。全人口に占める比率は02年から12ポイント上昇し、51.2%となっている。
経済発展をけん引してきた東部の沿海地域は都市化率が61%。内陸部と呼ばれる中部や西部はそれぞれ47%、43%で差があるが、都市化の速度はむしろ内陸部が速い。例えば内陸の湖北省は今回の調べで初めて都市部の人口が半数を超えた。
産業構造も大きく変わりつつある。02年調査では農業など第1次産業で働く人が50%、サービス業など第3次産業は28%だったが、11年には1次産業が34%、3次産業が35%となり、初めて逆転した。15~64歳の「生産年齢人口」は初めて10億人を突破したが、急速な若年層の縮小と都市化の傾向は将来、労働力の不足や社会保障の負担増などとして表面化する可能性もありそうだ。