「銀行とガス権益譲渡」 キプロスがロシアに提案
金融支援の見返りに

【モスクワ=石川陽平】キプロスのサリス財務相は21日、訪問先のモスクワで、ロシアから追加の金融支援を受ける見返りに、キプロスの国営銀行の株式や天然ガス田の権益を譲渡する提案をしたことを明らかにした。20日に続き21日もロシアと交渉を続ける。欧州委員会の幹部も21日、モスクワに入り、ロシアとキプロス支援問題を協議する。
サリス財務相は21日、記者団に「銀行や天然ガス、他の資産と関連させた可能性を協議しており、数多くの条件が浮上している」と指摘。ロシアに一部資産の譲渡を提案したことを認めたうえで、条件の調整を急いでいると述べた。
欧州連合(EU)加盟国のキプロスの議会は19日、ユーロ圏から支援融資を受ける条件になっていた国内預金への課税法案を否決。支援融資を受ける見通しが立たなくなった。このため、危機打開に向けてロシアから追加の金融支援を取り付けた上で、新たな緊急対策をまとめる考えだ。
ロイター通信によると、サリス財務相は21日も続行したロシアとの協議で、2011年末にロシアから受けた25億ユーロ(約3000億円)の支援融資について、16年に迎える返済期限の5年間の延長や、利率の引き下げを要請。追加の融資は求めていないと述べた。
ロシアから投資の受け入れを検討する銀行には、経営危機で国営化した銀行などが含まれる可能性がある。権益を譲渡する天然ガス田に関しては、ロシア国営ガス会社ガスプロム系列の大手銀行が19日、キプロスの大陸棚のガス鉱区の開発権を得る見返りに金融支援をすることを提案した。
一方、21日にはバローゾ委員長ら欧州委員会の幹部がロシアとEUの関係を協議する会議に出席するため、モスクワを訪問した。キプロスへの支援問題も話し合う。
メドベージェフ首相は21日、ロシアも含めたすべての関係者が参加し、キプロスへの支援を協議することが不可欠だと述べた。キプロスの国家資産をロシアに譲ることには、ロシアの影響力拡大を懸念するEUが慎重になる可能性もある。
ロシアの法人と個人はキプロスの銀行預金の約3分の1を占める。ロシアの多くの企業がキプロスを租税回避地(タックスヘイブン)として利用し、関連会社を登録。キプロスの危機がロシア経済に混乱をもたらす懸念が出ている。