米金融大手、業績格差広がる JPモルガンなど増益
4~6月 バンカメは赤字に
米金融大手の4~6月期決算が19日、ほぼ出そろった。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスが増益を確保する一方、バンク・オブ・アメリカは大幅な赤字で業績格差が広がっている。各社とも不良債権の処理費用の減少で利益を増やす構図が続き、融資など本業の回復は鈍い。
本業の収益課題
好調組の代表格がJPモルガン。景気の緩やかな回復でカード部門の利益が2.7倍となった。投資銀行部門では株式の引き受けや助言業務の手数料収入が伸びた。
ただ、増益に貢献したのは不良債権の処理費用の減少だ。融資先の業況が改善、貸し倒れに備えた引当金は46%減った。過去に積んだ引当金も取り崩し利益に計上した。
シティは6四半期連続で黒字を確保。こちらも不良債権関連費用が49%減ったことが増益の主因だ。事業会社の粗利益に当たる純営業収益は約7%も減少。主力の個人向け金融部門は南米やアジア地域が伸びたものの、最大の市場である米国内で収入が大幅に減った。証券・投資銀行部門も減収で、本業の収益力の強化に課題を残した。
ゴールドマン・サックスも稼ぎ頭だった市場取引部門が規制強化の影響もあり大幅な減収となった。債券や株式の引き受けなど投資銀行部門の貢献で純利益は77%増えたが、利益は市場予想を大きく下回った。
住宅バブル崩壊の負の遺産が響いたのも今回の特徴。業績回復の遅れが最も目立つバンカメは住宅ローン担保証券(MBS)の損失に絡む訴訟で投資家に85億ドル(6700億円)を支払うことで和解。88億ドル2600万ドルの最終赤字に陥った。
MBSの損失は、大半が08年に買収した住宅ローン会社カントリー・ワイド・ファイナンシャルの負の遺産。和解には他の投資家が反対して提訴しており、負担額が膨らむ恐れもある。
住宅問題が重荷
住宅ローン関連ではJPモルガン、シティ、ウェルズ・ファーゴも同種の問題を抱える。違法な住宅差し押さえを巡り、各社が司法当局に巨額の和解金を払うとの観測などもある。
JPモルガンは差し押さえ問題に関連して10億ドルの費用を計上し、個人金融部門の利益が大きく減少。ダイモン最高経営責任者(CEO)は「問題の解決にはまだ時間がかかる」としている。
訴訟の先行きには不透明さが伴う。このため適正な引当金の水準などが判断しにくく、市場関係者は「引き続き収益の圧迫要因になる可能性がある」(バークレイズ・キャピタル)とみる。
(ニューヨーク=西村博之)