米下院情報委、中国2社との取引自粛を要請
「安全保障上の脅威」と判断
【ワシントン=中山真】米下院の情報特別委員会は8日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の部品を米政府の通信システムから排除することを求める報告書を公表した。米企業の買収阻止や、米民間企業にも取引の自粛も盛り込んだ。中国当局の影響を受けるとされる両社が米国市場に浸透すれば、安全保障上の脅威となりかねないと判断した。
米国ではかねて、中国政府や共産党との関係などを問題視する声が上がっていた。下院の委員会が具体的な措置を打ち出したことで、米国内での活動に影響が及ぶ可能性がある。両社は反発しており、米中間の新たな火種となる可能性もある。
同委員会は昨年11月から聞き取り調査などを実施。報告書によると、両社は中国政府などとの関係などに関して委員会が求めた情報を十分に提供しなかったとする一方、華為の元・現従業員や専門家などからは米国の法令に違反する活動をしているとの情報を得たと明らかにした。
さらに「中国は悪意のある目的のために(2社を)利用する動機も機会もある」と断定した。米国が科しているイランへの経済制裁との関連でも両社が関連法令に違反していない事実を証明する文書などを提出しなかった点なども挙げ、両社からの米国の情報システムへの部品提供は安全保障上の深刻な脅威となると結論づけた。
ロジャース委員長は同日の記者会見で「我々は両社と中国共産党政権との結びつきを深刻に懸念している」と強調。「中国はサイバースパイ活動をおこなっている最大の悪玉であり、この重要な調査に対し、華為と中興は我々の懸念を全く解消できなかった」と指摘した。
ロイター通信によると、華為は「事実無根」と反論した上で「競争を阻害し、中国企業が米国の市場に参入しないようにすることが報告書の目的ではないかとの疑念を持つ」と不満を表明。中興も同委員会への書簡の中で報告書に同意できないとの立場を示した。
華為と中興はともに世界140カ国以上で製品を販売し、売上高に占める海外比率が5割を超えるグローバル企業。両社とも年間の国際特許出願件数がパナソニックなど日本企業を上回って世界首位になったこともある。
アジアやアフリカの新興国を足場に欧米など先進国にも進出。華為の2011年の売上高に占める米国など米州の比率は12%だった。最近はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)などの携帯端末や一般企業向けの情報システム事業を強化している。
両社を巡っては、中国政府から不当な補助金を受けているとして欧州連合(EU)が対抗策を検討するなど摩擦が激しくなっている。対立が先鋭化すれば、両社の拡大戦略に影を落とすだけでなく、報復合戦にも発展しかねない。
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