米、対ロ制裁発動 クリミア議会がロシア編入決議
【ワシントン=吉野直也、モスクワ=田中孝幸】ウクライナ南部・クリミア半島でロシア軍が実効支配を強めているのに対し、オバマ米大統領は6日、ロシアとウクライナの一部当局者を念頭に制裁の発動を命じた。資産凍結や、査証(ビザ)の発給制限、米国への渡航禁止などが柱。一方、クリミア自治共和国議会は6日、ロシアへの編入を求める決議を採択。米ロの対立が鮮明になってきた。
オバマ氏は制裁の発動対象について「ウクライナの主権、領土保全、民主制度の侵害に責任を負う個人と機関」と指摘し、ウクライナに軍事介入したロシアを想定していることを明らかにした。
制裁発動の理由に関しては「ウクライナの平和と安全、安定、主権、領土保全が脅かされている」と表明。同時にこの現状は「米国の国家安全保障と、外交政策を脅かすものであり、この脅威に対処するため、国家緊急事態を宣言したい」と強調した。
一方、クリミア共和国議会は16日に、ロシアへの帰属替えの是非を問う住民投票を実施することを決定。ロシアによる実効支配強化の動きの一環とみられ、ロシア下院幹部は6日、他国領土の編入手続きの簡素化法案を来週採択するとの見通しを明らかにした。「併合に向けた布石」(欧米外交筋)とみられている。
ロシアのプーチン大統領は半島を併合する意図を否定する一方、現地住民の意思によっては半島が独立する可能性を示唆している。大統領は6日、安全保障会議を開き、自治共和国の編入決議について討議した。
クリミア共和国議会はロシアの強い影響下にある。ロシアは今後の欧米との交渉に当たって半島の併合を辞さない構えをちらつかせ、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟阻止やロシア黒海艦隊の駐留権などの権益保護を図る狙いがあるとみられる。