あなたは年金を受け取れるだろうか
戦後史の歩き方(6) 東工大講義録から
今回は日本の年金制度について考えてみましょう。「君たちは年金をもらえるか」という問題です。20代から将来の年金のことまで考えてほしくはないという思いはあるのですが、一方でこれから保険料を払い込んで社会保障制度を支えるわけですから、どんな仕組みになっているのか考えましょう。
変わる生活保護の「最低限度」
社会福祉、社会保障という言葉がありますが、大きく分けて二つあります。一つは生活保護のように国が人々の生活を支えていく仕組みです。いわゆるセーフティーネットです。全額税金でまかなわれます。もう一つは、保険や年金、雇用保険。皆さんが将来に備え、働いて保険料を払い込んでいくわけです。
昨年度に生活保護に使われた予算はざっと3兆7000億円と見積もられています。今年度予算は約92兆円ですから、生活保護費の大きさがわかると思います。とりわけ2008年にリーマン・ショックが起き、日本の経済状態が非常に悪くなってからは、受給者が増えました。仕事を失い、生活できなくなった人が増えたことが大きく影響しているのです。
生活保護が受けられる根拠は憲法25条にあります。「国民は最低限度の文化的な生活を受ける権利がある」。つまり、人間である以上、あるいは日本に暮らしている以上、ぎりぎりの文化的な生活を保障しなければいけないという精神を明文化したものなのです。
生活保護で認められる最低限度の文化的生活とはどの程度のものなのか。昔、日本がみんな貧しかったころにはそれほどではありませんでしたが、だんだん豊かになってくると、時代によって定義が変わってきます。
例えば、過去にはエアコンは...
ジャーナリストで東京工業大学特命教授の池上彰(いけがみ・あきら)さんの連載コラムです。経済や教養、若者の学び方や生き方、さまざまなニュースや旬のテーマを、池上さん独自の視点・語り口で掲載します。