ノーベル賞・根岸氏、人工光合成研究に120人結集
2010年のノーベル化学賞を受賞した根岸英一・米パデュー大学特別教授は18日記者会見し、国内の化学研究者ら120人以上を束ねて「人工光合成」の研究を始めると発表した。「オールジャパン」で、代表的な温暖化ガスでもある二酸化炭素(CO2)をエネルギーなどに変換できる効率の良い化学反応の実現を目指す。文部科学省も後押しする方針だ。
根岸氏は同日、文科省の倉持隆雄研究振興局長に計画を説明。研究予算などの支援を求めた。同省は早ければ11年度予算から配分を検討する。
計画では植物が太陽光を受け、CO2と水を原料に酸素と糖(エネルギー)を作り出す光合成を人工的に再現するため、反応を促す新たな「触媒」を探す。特に金属系触媒を研究する。太陽光パネルの新材料や医薬品の合成反応も研究する。
根岸氏が特別招へい教授を務める北海道大学触媒化学研究センターを中核拠点に東京大学、東京工業大学、筑波大学、京都大学、九州大学などが参加。根岸氏は「(触媒の分野で)日本はトップクラス。このプロジェクトから新たに1、2人のノーベル賞受賞者を出したい」と意欲を見せた。
光合成は数十もの化学反応が関係し複雑だが、根岸氏はかねて「植物にできることが人工的に実現できないはずがない」と語ってきた。CO2の活用は温暖化対策にも役立つとの期待がある。
産業技術総合研究所・太陽光エネルギー変換グループの佐山和弘研究グループ長によると、人工光合成は根岸氏のように金属触媒を利用する方法のほか、半導体粉末を使う方法が有望視される。海外でも研究が活発化しており、米カリフォルニア工科大学などは今後5年間で約110億円を投じるという。日本ではこれまで国を挙げての大型計画はなかった。産総研の人工光合成研究の予算も年数千万円どまりだ。
触媒研究は日本のお家芸とされながら「地味で注目を浴びていなかったかもしれない」(文科省幹部)。新計画ではこれまでの蓄積も掘り起こして研究の加速を狙う。