川内原発、今秋再稼働へ 規制委が合格証
原子力規制委員会は16日、九州電力が再稼働に向けた安全審査を申請していた川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)について、事実上の合格を決定した。東京電力福島第1原発事故をふまえた新たな規制基準を川内原発が初めてクリアした。九電は今秋の再稼働をめざすが、地元自治体の同意が残る課題になる。
同日の定例会合で、5人の規制委員が合格証案にあたる「審査書案」をまとめた。審査書案は川内1、2号機は新規制基準に「適合している」と結論付けた。
8月15日まで国民からの意見を受け付け、規制委が8月下旬にも正式に合格を決める。設備の検査や地元自治体の同意などの手続きを済ませれば再稼働が可能になる。昨年9月以降、国内のすべての原発が運転を止めている。原発再稼働が進めば、不足気味の電力を安定して供給しやすくなる。
審査書案は川内原発が新規制基準に適合しているかどうかを規制委が項目別にまとめ、全体で418ページある。東日本大震災を教訓に厳しく見直した地震・津波対策では「基準に適合している」と判断。川内原発の施設は最大級の揺れや津波に耐えるよう造ってあり、安全機能が損なわれることはないと記載した。火山のリスクに関しては九電の監視体制を「妥当」とし、安全性に影響を及ぼす可能性は十分小さいと見積もった。
2011年 3月 | 東日本大震災で福島第1原発事故が発生 |
12月 | 政府、福島第1原発事故の収束を宣言 |
12年 5月 | 泊原発(北海道)が定期検査入り。42年ぶりに稼働原発ゼロに |
7月 | 大飯原発(福井県)が再稼働 |
9月 | 野田佳彦政権、「原発稼働ゼロ」を目指すエネルギー戦略を決定 |
12月 | 自民党が衆院選で大勝。安倍晋三政権が発足 |
13年 7月 | 原発の新規制基準が施行 |
9月 | 大飯原発が定期検査入り。稼働原発が再びゼロに |
14年 3月 | 規制委、川内原発(鹿児島県)の優先審査を進めると決定 |
4月 | 原発の再稼働推進を明記したエネルギー基本計画を閣議決定 |
5月 | 福井地裁、大飯原発の運転差し止めを命じる判決 |
7月 | 規制委が川内原発の「審査書案」を決定 |
新規制基準は原発の炉心が壊れたり全電源を失ったりするような重大な事故に陥った際に、損傷の拡大を食い止める装置の導入を義務付けている。川内原発は移動式のポンプ車や電源車などを配備しており、重大事故を防ぐ手立てが備わっていると評価した。
川内原発1、2号機は1984年と85年に相次ぎ運転を開始し、2基で九電の全電力供給の1割弱をまかなえる。昨年7月の新規制基準施行日に、規制委に対し安全審査を申請した。これまでに9電力会社が12原発19基の審査を申請している。
川内原発は地震や津波のリスクが他原発と比べて小さく、九電による安全対策の導入が早かったため最初に審査書案がまとまった。ただ、地元同意の手続きが進まなければ再稼働の時期が遅れる可能性がある。
菅義偉官房長官は16日日午前の記者会見で、川内原発の審査合格内定について、安全性が確認された原発について再稼働を進める姿勢に「全く変わりはない」と強調した。
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