中南米開拓、首相先頭に 歴訪に経済人70人同行
安倍晋三首相は25日からブラジル、メキシコなど中南米5カ国を歴訪する。6億の人口を擁して急拡大する中南米地域の市場を首脳外交で開拓する考えで、約70人の企業首脳らも同行する。インフラ整備や資源開発の需要を取り込み、日本企業の競争力強化と経済成長につなげる。経済支援などで影響力を拡大している中国をけん制する狙いもある。
「中南米訪問で、着任から1年半で47カ国を訪れることになる。トップセールスで(日本企業の)インフラ受注額が増えた」。首相は24日、都内で開いた経団連主催のフォーラムでこう強調した。「成果が上がっているのでお誘いしたらぜひ応じていただきたい」と呼びかけ、今後の外国訪問でも経済ミッションの編成に意欲を示した。
中南米地域は消費意欲が高い中間層が過去10年で5000万人増えており、2004年以降は安定成長を持続している。政府はアジアと違って日本との間に目立った歴史的な遺恨もなく、日系企業が進出や受注をしやすい環境にあるとみる。首相も中南米市場の開拓を政府主導で取り組む重要性を、周辺に重ねて主張しているという。
首相は各国首脳との会談を通じて経済的な協力関係を強化する。地元経済界を集めた会合にも頻繁に足を運び、日本の技術力などの魅力をアピールする予定だ。経済ミッションには榊原定征経団連会長らが参加し、業種は自動車メーカーから資源、食品、建設、金融まで幅広い。
最初の訪問国であるメキシコは石油やシェールガスなどの資源も豊富で、これらの開発などに5年間で60兆円以上を投資するインフラ整備計画がある。ブラジルでは南大西洋の深海油田開発に政府系開発機関が総額20兆円を投資する。
首相はメキシコ、ブラジル両国との首脳会談で、大型プロジェクトを連携して進めることをそれぞれ提案する。政府間で協力関係が構築できれば、日本企業の受注に有利になるだけでなく、将来の資源獲得につながる可能性もあると期待する。
首相は日本が輸入する銅の48%を供給するチリも訪れる。日本企業が開発したカセロネス鉱山の開所式に出席する。日本の首相として初めて訪問するコロンビアは石油と石炭、トリニダード・トバゴは天然ガスや石油が豊富ないずれも資源国だ。
経済外交の合間に、各地で中南米に178万人いる日系人との交流会も開く。日系人の存在は中南米と日本の「特別な絆」の柱であるうえ、日本の魅力を国際社会に伝えるための強力な土台になるとの考えもある。和牛や日本食の普及イベントにも参加し、ソフトパワーの強化にも目を配る。