もんじゅ再開メド立たず 運転準備を凍結
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転再開の準備が事実上、凍結になる。約1万点もの機器の点検漏れが発覚した問題で、原子力規制委員会は15日、運営主体の日本原子力研究開発機構に管理体制の見直しを求める命令を正式に決めた。内部体制の構築には時間がかかるとみられ、年度内を目指してきたもんじゅの運転再開のメドは立たなくなった。
もんじゅの点検漏れは昨年11月に発覚した。原研機構からは今年1月に報告書が提出され、規制委は2月に立ち入り検査を実施。対応の検討を進めてきた。
15日の会合では、規制委事務局の原子力規制庁が「安全確保の体制が十分整っていない」「安全文化の劣化が認められる」と原研機構の体質を批判。委員からも「問題を何度も繰り返しており病は深い」(大島賢三委員)と厳しい指摘が相次いだ。
規制委は原子炉等規制法に基づく保安措置命令として、機器の点検状況の把握や管理システムの構築を求めることを決定。さらに、保安規定を変更し、組織内の責任を明確にするように求める。原研機構にも弁明の機会を与え、月内にも命令を下す。
原研機構は同日、「深刻に受けとめ、猛省している」(鈴木篤之理事長)との談話を公表した。
もんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故が発生。その後も2010年に原子炉内への機器の落下事故を起こすなど、トラブル続きで運転を長期にわたって停止している。同機構はもんじゅの年度内の運転再開を目指してきたが、規制委からの命令で、内部体制が整うまでは運転再開に向けた準備作業もできなくなる。
もんじゅは今後、機器の点検漏れ問題以外に規制委が検討中の新規制基準に基づく災害などへの対策を求められるほか、敷地内の断層の調査も終えていない。これまでに約1兆円の公費が投じられているが、問題が山積し、運転再開の見通しは全く立っていない。
もんじゅは、発電しながら燃料のプルトニウムを取り出すことを目指して開発が始まった。使用済み燃料を再利用する核燃料サイクル政策の中核的な施設だ。しかし前民主党政権時代には一時、廃炉も取りざたされた。原発で発生する「核のゴミ」を減らす新タイプの「専焼炉」に転用する計画も浮上するなど、政策的な位置づけは定まっていない。