法制局長官に小松大使 集団的自衛権解釈見直し派
安倍晋三首相は2日、内閣法制局の山本庸幸長官を退任させ、後任に小松一郎フランス大使を充てる方針を固めた。8日にも閣議を開き、正式に決める。首相は集団的自衛権を巡る憲法解釈の見直し議論を進めており、小松氏は見直しに前向きとされる。法制局長官は内閣法制次長が昇任するのが慣例で、異例の人事となる。
小松氏は外務省で条約課長や国際法局長を務めるなど国際公法に精通している。山本氏は先月19日に最高裁判事を定年退官した竹内行夫氏(元外務次官)の後任に起用される見通しだ。
小松氏は第1次安倍内閣が設置した、集団的自衛権の行使を可能にするための検討をする有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の実務に携わった。懇談会は日米が共同で活動する際、危険が及んだ公海上の米艦船の防護など4類型を検討し、解釈変更を求める報告書をまとめた。小松氏はこの立案にかかわった。
首相は第2次安倍内閣の発足に伴い、懇談会を再始動させたが、2月に1度開いただけだった。8月後半から議論を再開する方針で、憲法解釈をつかさどる内閣法制局の人事の刷新と合わせて、懇談会の議論を加速させる。今回の人事は集団的自衛権の行使容認に向けた地ならしを進める狙いがあるとみられる。
菅義偉官房長官は2日の閣議後の記者会見で「人事は白紙」と断ったうえで、政権の人事は「順送りでなく、適材適所で行っている」と強調した。
小松 一郎氏(こまつ・いちろう)72年(昭47年)一橋大法中退、外務省へ。国際法局長、11年9月フランス大使。神奈川県出身、62歳。
山本 庸幸氏(やまもと・つねゆき)73年(昭48年)京大法卒、旧通産省へ。内閣法制次長、11年12月内閣法制局長官。愛知県出身、63歳。