日本触媒工場、再開めど立たず 供給先の生産影響も
姫路製造所爆発事故
日本触媒の姫路製造所(兵庫県姫路市)で、29日起きた爆発事故で同工場全体で設備の稼働再開の見通しが立たないことが明らかになった。30日、大阪市内の本社で開いた記者会見で尾方洋介代表取締役専務執行役員などが明らかにした。同工場は紙おむつ用の高吸水性樹脂(SAP)で世界生産量の2割、原料のアクリル酸で約1割を生産し、顧客メーカーへの影響が懸念される。
「自治体から危険物製造の一時停止命令を受けており、これが解除されるまでは稼働再開はできない」(尾方専務執行役員)と苦渋の表情を浮かべた。事故の原因究明や再発防止対策を講じた上で姫路市などの許可が降りなければ稼働再開は難しい。
実際に被災した設備はアクリル酸とトルエンの貯蔵設備でSAPなどほかの設備自体に損傷はなかった。しかし停止命令は製造所全体に適用されており、許可が出るまではSAPの生産もできない状況だ。
在庫はSAPが0.8カ月、アクリル酸が2週間程度。「海外での稼働をさらに高める」(尾方専務執行役員)など対応を検討しているが、すでに海外拠点の設備稼働率は9割に達しており増産の余地は少ない。
SAPやアクリル酸のほかの生産メーカーにも「これから鋭意対応をしていきたい」(山本雅雄取締役常務執行役員)というだけにとどめ、供給への明確な方針は示さなかった。特に新興国の紙おむつの利用拡大で需給が逼迫しているSAPは他メーカーも高稼働の生産が続いており、例え緊急融通を要請しても応えられるかは不明だ。
損害額については、「現場の状況が把握できておらず現段階では算定ができない」(山本常務執行役員)としているが、設備だけでも少なくとも数億円の損害が出そう。さらに稼働再開まで時間が掛かれば、販売減や設備の稼働損など損失額は大きく膨れる可能性は高い。
日本触媒は事故対策委員会や事故調査委員会を設置し今後、事故原因の究明に当たる。地元自治体など関係各社に理解を得られる対策を講じる必要がある。国内外の顧客メーカーへの供給再開への見通しは不透明なままだ。