仲が良いけれど成績が悪いチーム、どうすればいい
【相談】
その思いは、チームを任されるようになった今も変わりません。会議では常に、全員が同じくらい発言できるよう、時間配分にも気を使っています。職場の雰囲気をいい状態に保ちたい。彼らにこの会社を好きになってもらいたい。そう思ってきたのですが、先日、ショッキングなことを上司に言われました。
私のチームは、同じ部にあるどのチームよりも、成績が悪いというのです。隣のチームに比べると、成果は3分の1以下だとまで言われました。しかし、隣のチームといえば、メンバー同士の対立が激しく、また、リーダーにも物議を醸す言動が多く見られます。今は定かではありませんが、少なくとも、かつてはそうでした。仲の良いチームのパフォーマンスが、仲の悪いチームを下回るということが信じられません。私は仲の良いチームで仕事をしていきたいのですが、どうしたらいいのでしょうか。
チーム内で波風が立つことを恐れる、表面的には平和主義なリーダーは、チームの成長を阻害する元凶です。残念ながらこのチームは、このままではいいパフォーマンスを上げられません。
なぜなら、チームが、成果を出せるまでに成長しきれていないからです。チームの成長には、4つの段階があります。(図1)

まず、第1段階は形成期(フォーミング)です。どんなチームも、まずはここからスタートします。この時期のメンバーは、お互いに気を使っています。様子を見ています。言われたことには粛々と取り組みますが、誰も本音を話そうとはしません。建前論とか、事なかれ主義という言葉がふさわしいチームです。
居心地が良いチーム?
こういう状況にあるチームは、非常に居心地が悪そうか、非常に居心地が良さそうか、どちらかに分類されます。居心地が悪いのは、エネルギーの低いチームになってしまっているケースです。コミュニケーションが足らず、冷ややかな空気になりがちです。居心地が良いのは、いわゆる仲良しクラブです。コミュニケーションもあり、雰囲気は温かいのですが、ただ、チームとしての生産性は高くありません。何を言っても建前ですし、何をするにも事なかれの方向へと流れます。仮にそれを阻止し、生産性を高めようとする人がいると、それを場を乱す要素と見なし、排除しようとします。

こうすることによって、居心地の良さを保つのです。これでは、メンバーの多様性を生かして、チームによるシナジーは得られません。
相談者のケースは、まさにこれに当てはまります。つまり、相談者のチームは、4つの成長段階のうち、まだ最初の段階でとどまっており、かつ、相談者は、そこにとどめようとしているのです。
チームとして力を発揮するためには、高い段階に進まなければなりません。第2段階にあるのは、混乱期(ストーミング)です。例えば何か解決すべきことがある時に、指示を待つのではなく、「私はこう考える」「私のアイデアが最善だ」「あなたの考えは間違っている」というように自分の考えを表現し始めます。
しかし、相互に受容する意識がまだ醸成されていないのでぶつかり合いや議論の平行線が続きます。この段階はチーム意識が希薄で自己が優先されている段階です。
メンバーはこの時に、お互いの本質を知ることになります。ただ、これは簡単なものではありません。メンバー全員が、自分の本音(考え方、こだわり、得意なこと、苦手なことなど)を知らせる自己開示と、自分と相手の違いをポジティブに受け入れる他者受容とを徹底しなくては、ストーミングは、ただの人格否定合戦に陥ってしまいます。
ですから、チームが混乱期にある時は、メンバー全員が、今は混乱期にあること、そして、それが成長のためには欠かせないことを、しっかりと知っていなくてはなりません。
経験しないと成長しない
チーム内で意見が対立することは、リーダーにとっては怖いことかもしれません。また、混乱期にあるチームは、得てして、形成期よりもパフォーマンスが低くなります。しかし、この時期を経験しないと、チームは成長しません。恐れていては、いつまでも成果が上がらないのです。混乱を、すぐに収めようと焦ってはいけません。この時期こそが、成長のために必要と腹をくくってください。
混乱期を過ごした後に訪れるのが、標準期(ノーミング)です。混乱期を経たチームのメンバーは、お互いのことが分かっています。ほかのメンバーを受け入れることができ、また、協力して仕事を進めることができるようになります。チームの目標が明確になるのもこの時期です。少しずつ、成功体験が重なっていき、個人としては自信が生まれ、チームとしては互いに信頼できる関係性が出来上がります。1人ではできないことでも、チームでならできると実感し始め、一時期下がっていたパフォーマンスも、徐々に上がります。
さらにこの先があります。第4段階、達成期(トランスフォーミング)です。与えられた目標が物足りなくなり、メンバーは自律的に動きだします。こうなったら、もう、リーダーはリーダーシップをメンバーに委ね、支援的な役割になるのです。
この人に聞きました
アクションラーニングソリューションズ代表取締役、一般社団法人チームビルディング協会代表理事。富士通、システムインテグレーションベンダー、KPMGコンサルティング(現Bearing Point)の人事コンサルタントを経て独立。ジョージワシントン大学大学院人材開発学部マイケルJ.マーコード教授より直接、アクションラーニングコーチ養成プログラムを受け、GIALジャパン設立(現:NPO法人 日本アクションラーニング協会)に参加、ディレクター就任する。
(日経ウーマンオンライン編集部)
[nikkei Woman Online2013年3月15日掲載]
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