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会社人生を変える 目指すべき「管理職像」の描き方

キャリアカウンセラー 藤井佐和子

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 「管理職にはなりたくない」「自分にはリーダーは無理」――。そんなふうに考える若手・女性社員は少なくありません。組織の中で働き続けるためには、管理職になるという選択肢も視野に入れる必要があります。しかし、特に女性は管理職を目指すことに尻込みしがちです。管理職とはどのような存在なのか、そのためにどういう意識やスキル、行動が必要なのか。キャリアカウンセラーの藤井佐和子氏が解説します。

30代後半から40代前半になると、組織で働く女性は「そろそろ管理職を考えてみないか」と言われるケースが多くなります。男性にとっては、半ば当たり前のステップかもしれませんが、現在は女性も組織の中でリーダーシップを発揮することが期待されるようになっています。

そんな時代の変化を受けて、「管理職を目指すべきか否か」という悩みを抱えて私のところに相談にいらした女性は「正直、管理職にチャレンジしてみたいとも思うんですが…」と本音を漏らします。やってみたい、チャレンジしたい気持ちはあるけれど、踏ん切りがつかない。その理由を聞くと、こんな答えが返ってきます。「会社に女性管理職の前例がない」「グイグイとチームを引っ張っていく自信がない」「周囲から支持が得られなかったらどうしよう」――。

なりたい管理職像が漠然としている人が多い

この不安の声から共通して言えることは、管理職のイメージがあまりにも漠然としすぎていること。自身が「自分だったら、どんなリーダーになりたいのか、イメージが明確ではないこと」です。もし、管理職を目指してみようと思ったら、まずは、なりたいリーダー像をしっかりと描くことからはじめてみてほしいと思います。

もちろん男性も、それぞれがなりたいリーダー像を描く必要がありますが、女性よりも同性の先輩で役職についている人は大勢います。それを見ていれば、「いつか自分も、ああなりたい」というモデルがイメージしやすいでしょう。しかし、女性は同性の先輩が少ない、もしくはいないのですから自分で描くしかありません。

描き方がわからない、という相談も

では、どのように描いたらいいのでしょうか。実際、キャリア相談でも「確かにリーダー像を描く必要があるのはわかるけれど、どこからどのように描いたらいいのかがわからなくて」とおっしゃる方もいらっしゃいます。今回は、描くためのポイントをいくつか挙げてみますので、参考にしていただけたらと思います。

1)自己認識、リーダーとして使える強みを発見する

「自分の強みは何ですか?」。カウンセリングやセミナーでそう聞くと、「私には資格や特別な専門性がありません」と言う声がしばしばあがります。

しかし、リーダーとしての強みは、資格の有無や高い専門性だけではありません。むしろ重要なのは「ヒューマンスキル」と呼ばれる、コミュニケーションに関わるスキルや問題を解決したり、部下を指導したり、やる気にさせたりするスキルです。

また、男性とは異なる女性ならではの強みを発見し、どう活かしたらいいのかを考えてみるとよいでしょう。よく男性は「システム脳」女性は「共感脳」ということが言われます。リーダーとしてパフォーマンスを発揮する男性は、物事を深く洞察し、優先順位を立て、論理的に進めていくことが得意な人が多い。

一方、女性リーダーには人の気持ちに関心を示し、受け止め、相手の気持ちに働きかけることが得意な人が多いそうです。トップダウンではなく、下に降りていき、一緒になって考えることができることも支持される理由です。また、自分とは異なる価値観を持つ人や、外国人とも上手に関わることができるのです。

得意な「やり方」を活かして、結果として成果を出すことができれば、そこに至るまでのプロセスは男性と同じでなくても構わないのです。

いかがでしょうか。自分の強みを認識し、どうやってそれを発揮しようか、まで意識的に考えてみてください。

2.なりたいリーダー像を具体的に描く

自分だったら、どんなリーダーについていきたい、と思いますか? まず、今まで出会ったことのあるリーダーから、「なりたいリーダー」と「なりたくないリーダー」を思い浮かべてみてください。そして、それぞれの言動の特徴を思い出しながら、列挙してみます。この作業をすることで、自分のリーダー像がクリアになっていきます。これからリーダーになる、という方は、特に忙しくならないうちに描いておくとよいでしょう。なぜなら、どんなにわかっていても、実際にリーダーになると、なりたくないリーダーの言動をしてしまうことがあるからです。できれば、理想のリーダー像を常に意識できるように、いつでも見返せる紙などに書いておくとよいでしょう。

3.管理職になることがゴールではない。10年後20年後を描いておく

特に女性には「出世したいから管理職を目指すわけではない」という人が多いです。それならばなおさら、リーダーになる意味や目的を明確にしておく必要があります。管理職・リーダーという役割を通して、あなた自身ははどんな人になりたいのか。10年後を思い描いてみましょう。

ある役職に就いていた時は、たくさんのお中元やお歳暮、年賀状が来ていたのに、退職したり、その役職でなくなった途端にそれらの数が激減するというケースがよくあります。それでは寂しいですね。リーダーになる、管理職としての役割を果たすことが自分の人生を豊かにし、自身の存在意義を高める。つまり、周囲の役にたつ存在になることを目指してはどうでしょうか。

さらに、いつか会社を辞める時のことも考えてみましょう。辞める時、あなたが周囲からどんな風に評価されているか、されていたいか。そのために今、何をすればいいか――。

これら3つの問いには、思った以上に時間を取って真剣に考える必要があるかもしれません。私のセミナーでは、上の3つの問いについて、ワークショップ形式で話をしながら明確にしていくのですが、以前、参加してくださったある女性が、こんなことを言っていました。「セミナーに申し込んだとき、上司から管理職としてやってみないかと言われ、自信がないけれど、やらなくちゃいけないのかな、と思っていました。でも、自分の将来を描いていくうちに、管理職を引き受けてみたい、という能動的に関わる気持ちに変わってきました。"すべて自分のため"と思ってやってみようと思います」。このセミナーは土曜日開催だったのですが、彼女は「週明けが楽しみになった」とまで言ってくれました。

せっかくやるのなら、自分らしいリーダーとしての信念を持って挑んでみる。自身の人生が変わる、大きなきっかけになりますし、自分がどうしたいかがはっきりすれば、多くの支援者も出てきますから、まずは不安を払しょくするために、あなたの理想のリーダー像を描いてみてはいかがでしょう。

藤井佐和子
キャリアカウンセラー。キャリエーラ代表取締役。大手光学機器メーカー海外営業部勤務後、人材関連会社のコンサルタントとして、女性の転職をサポート。キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティー、大学生のキャリアデザインをテーマとした研修や講演を行う。カウンセリング実績は1万3000人以上。 近著に「女性社員に支持されるできる上司の働き方」(WAVE出版)

[nikkei WOMAN Online2012年8月24日掲載]

 日経WOMAN、nikkei WOMAN Online、日経ビジネスでは、男性中心の仕事社会の中で女性がリーダーとして活躍するための短期集中講座「女性マネジャーのための課長塾(第2期)を開催する。http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbsemi/0930/wom1201/

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