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震災復興にタブレット ドコモが広げる支援の輪

ジャーナリスト 石川 温

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東日本大震災から2年。各地で復興支援が行われているなか、NTTドコモは7日、震災復興に貢献しているNPOなど市民団体に助成していくことを明らかにした。同社はこれまでもタブレットを使った支援策を推進してきた。自治体や民間企業と協力しながら、住民同士のコミュニケーションを円滑にするなど、支援の輪を少しずつ広げている。

タブレットを使いコミュニティー支援

NTTドコモは東日本大震災からの復興活動をさらに促進するため、NPOなど市民活動団体に対し、活動資金の一部を助成する。対象は11の団体で、総額は2500万円となる。荒木裕二東北支社長は「どの団体もこれまで支援がなくても一生懸命に活動してきた。ドコモとしては少しでも力になりたいし、モバイルの良さを生かして一緒に活動してもらいたい」と期待を込める。

NTTドコモは、2011年12月に東日本大震災から復興活動を支援する専任部署「東北復興新生支援室」を設立。これまで自治体や民間企業などと協力し、被災者や地域の復興活動に取り組んできた。

NTTドコモが得意とするのがモバイルを活用した取り組みだ。特にドコモのAndroidタブレットを使ったコミュニティー支援などに注力してきた。

福島県の飯舘村、富岡町、楢葉町は、福島第1原子力発電所事故によって、全国各地で避難生活をする住民同士や移転中の役場とのコミュニケーションを円滑にするために、タブレットを配布した。役所からの情報配信だけでなく、住民同士がテレビ電話などで顔を見ながらコミュニケーションができる。掲示板に書き込みもできるようにもなっており、テキストによる情報交換も可能だ。

タブレットは飯舘村の約2700世帯、富岡町の約4000世帯、楢葉町の約3900世帯に配布したが、利用者のなかには高齢者も多く存在する。そのためタブレットは「大画面で文字が大きく表示されるものが好まれる傾向がある」(佐藤一夫・東北復興新生支援室ゼネラルマネージャー)という。

単に高齢者にタブレットを渡しただけでは、どのように使ったら良いのか理解できず、使われないまま終わるケースも多い。そこでNTTドコモでは、自治体やNPOと連携してタブレット説明会を実施するなど、住民の利用を促す環境を整備している。NTTドコモから助成を受けたNPOのなかには、年配層などに向けてタブレットの使い方を教える団体も含まれている。

タブレットで連絡員の巡回内容を記録

岩手県釜石市と同北上市では、仮設住宅に暮らす住人を見守る「仮設住宅支援連絡員」用のデバイスとして、タブレットが活用されている。

 釜石市では、仮設住宅の住人が安全に暮らしているかを確認するため約70人の「連絡員」が巡回している。毎日延べで約3200戸の仮設住宅を訪問している連絡員にはタブレットを配布。訪問時に巡回記録を登録し、サーバーにアップすることで、即時に訪問履歴や相談受け付けなどをデータベース化した。自治体も、即座に巡回情報を把握できるようになった。

昨年夏までは入居者の在宅確認や相談受付などを紙に書き込み、市役所に提出していた。この方法では情報量が膨大となり、管理も追いつかなくなってきたためタブレットを導入した。

タブレットのアプリは独自に開発したもので、簡単な操作でほとんどの作業ができるようになっている。なかには「普段は携帯電話も使わない」という70歳を超える連絡員もいて、簡単に入力できることが課題とされた。ほとんどの操作はタッチだけででき、相談受け付けだけを文字で入力する仕様を取り入れて、連絡員が使いこなせるようにした。導入に際しては、操作説明会を何度も実施している。

北上市のタブレットを使った避難者訪問支援システムは、クラウドサービス大手の米セールスフォース・ドットコムのサービスを採用。汎用性と高い拡張性を持ったシステムとした。「釜石の場合は連絡員の年齢層が高いため、銀行のATMのようなユーザーインターフェースを用意した。北上の場合は現場のスタッフの年齢層が若く、IT(情報技術)リテラシーが高いため、米セールスフォースのものも使いこなせるようだ」(佐藤氏)

「復興支援の糸口につながる」

タブレットの活用によって、復興支援を少しとはいえ後押しできそうだが、採用されている自治体は限られている。自治体の首長の意識がITに向いており周辺スタッフのリテラシーが高ければ、一気に導入が進むようだが、そうでないところは重たい腰が上がらないようだ。

実際にタブレットが家庭などに配布され、遠く離れた人とコミュニケーションが取れるなど活用が進むと「被災した方も少し元気になるようだ」(佐藤氏)という。多くのタブレットが普及すれば、それだけコミュニケーションの輪は大きくなる。タブレット導入が広がることで「コミュニティー支援と街づくりの一環として、うまくいけば、復興支援の様々な糸口につながっていくのではないか」(佐藤氏)と期待する。

被災地の復興の道のりはまだこれからだが、タブレット活用がささやかな一助になっているようだ。

石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著は、本連載を基にした「iPhone5で始まる! スマホ最終戦争―『モバイルの達人』が見た最前線」。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/channel/226)を配信中。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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