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古いパソコンも快適動作 「スプラッシュトップOS」を試す(上)

フリーライター 竹内 亮介

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パソコン技術の進歩は「日進月歩」ではなく「秒進分歩」と呼ばれるくらい速い。6~7年前のノートパソコンに最新の「ウィンドウズ7」をインストールしても、OSの機能を十分に発揮できず動作も鈍い。しかし古いパソコン上でも動作し、高速に起動するOSが登場して注目を集めている。それが米スプラッシュトップ社の「スプラッシュトップ(Splashtop)OS」だ。

今回はこのOSを様々なパソコンにインストールし、使い勝手などを検証してみた。使用したOSは、3月29日時点での最新版「スプラッシュトップOS version V1.0」である。

ブラウザーだけで使う軽量OS

スプラッシュトップOSは、LinuxをベースにしたシンプルなOSで、利用できるのは基本的にはブラウザーだけだ。ウィンドウズや「MacOS X」のようにソフトウエアを導入して様々な作業を行うことはできない。だが、最近はネットだけで利用できるサービスが増え、メールや写真の共有、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、写真の簡単な加工やビジネス書類の作成なども可能になっている。ブラウザーしか使えないOSでも守備範囲は広い。

米グーグルがリリースを予定しているパソコン用の新OS「クロームOS」も、軽量でシンプルなOS上で動作するブラウザー「グーグルクローム」を使い、多くのネットサービスを利用できる仕組みを整えている。ブラウザーだけで十分という考え方は、最近では1つのトレンドになりつつある。

海外ではソニーや米ヒューレット・パッカード、台湾エイサーなどのパソコンに、ブラウザーやメールを素早く利用する「簡易OS」としての採用実績がある(スプラッシュトップOSをベースにカスタマイズしたOSも含む)。パソコンにはウィンドウズと一緒に導入されており、用途に応じてどちらかを起動して使うという形だ。

HDDに変更を加えず導入

2011年2月、スプラッシュトップ社は一般ユーザー向けの導入ソフトを同社のウェブサイトで公開。この導入ソフトを使えば、スプラッシュトップOSを自分のパソコンにインストールして利用できる。

導入作業は簡単だ。スプラッシュトップ社からダウンロードした導入ソフトをウィンドウズ上で起動すると、スプラッシュトップOSを動作させるためのファイルをダウンロードし、導入作業を開始する。作業の最後に「インターネット・エクスプローラー」の「お気に入り」や「ファイヤーフォックス(米モジラ財団)」のブックマーク、そして無線LANの設定をスプラッシュトップOSに引き継ぐかどうかを選択するダイアログが表示されるので、必要に応じて引き継ぐかどうかを選択し、再起動する。これで導入作業は終了だ。

ウィンドウズOSを導入するときは、ハードディスク装置(HDD)を初期化してOS導入用のパーティションの作成やパソコンに保存してあるデータのバックアップなど、様々な作業が必要になる。しかしスプラッシュトップOSの導入ではこうした作業は必要ない。導入作業が終了したら再起動すると、ウィンドウズOSとスプラッシュトップOSのどちらを起動するかを選択する画面が表示される。カーソルキーでスプラッシュトップOSを選択し、「Enterキー」を押せばスプラッシュトップOSが起動する。

起動しない場合は、ウィンドウズのコントロールパネルから、他のソフトウエアの削除と同様な処理で削除すればよい。これだけで、もとのウィンドウズOSのみが起動する環境に戻せる。

旧型機でもOS起動は4秒

スプラッシュトップOSを起動すると「アプリケーション」と表示された大きなボタンや、履歴情報が並ぶデスクトップの画面が表示される。ボタンや履歴をクリックするとブラウザーが起動し、各種ネットサービスのウェブサイトにアクセスし、様々な作業が行えるようになる。

起動にかかった時間は、今回試した台湾アスースのモバイル・サブノートPC「UL20A」では4秒。ブラウザーの起動は1~2秒で、ウェブサイトの表示も非常に速かった。UL20AのCPUはデュアルコアだが動作周波数が1.2ギガヘルツと低いセレロンSU2300、メモリは2ギガバイト、HDDも320ギガバイトと、現行モデルと比較すると世代的には3世代ほど古い。こうしたパソコンでもスプラッシュトップOSは十分、快適に動作する。

「ニコ動」も視聴可 解像度次第でコマ落ちも

スプラッシュトップOSに組み込まれているのは「クロミウム(Chromium)」というブラウザーだ。グーグルのグーグルクロームに似ており、両者は同じソースコードから派生した「兄弟ブラウザー」ともいえる存在である。すべて試したわけではないが、グーグルクロームの機能拡張をいくつかスプラッシュトップOS上のクロミウムにインストールしてみたが、問題なく動作した。

クロミウムにはあらかじめフラッシュ技術が組み込まれ、「ニコニコ動画」や「YouTube(ユーチューブ)」などの動画共有サイトも利用できた。ただ、低解像度でビットレートが低いと映像をスムーズに表示できたが、高解像度でビットレートの高い動画はコマ落ちが生じた。同じ高解像度の動画をウィンドウズのファイヤーフォックスやグーグルクロームで再生した場合には、コマ落ちは発生しなかった。

このほか企業サイトでよく使われているフラッシュ動画を試すと、やや動作が鈍くなる場面もあった。例えばソニーのパソコン「VAIOシリーズ」に使われているフラッシュ動画は、ウィンドウズOSでは非常に速く表示するが、スプラッシュトップOSのクロミウム上での表示はややゆっくりだった。

データは外部ストレージに保存

ウェブメールではグーグルの「Gmail」やYahoo!JAPANの「Yahoo!メール」、マイクロソフトの「Hotmail」などを試したが問題なく利用できた。OCNのウェブメールサービス「OCNメール」では「このウェブサイトは利用できない」と表示され、メールの閲覧なども不可能だった。ウェブサイト上のサービスならすべて利用できるわけではないようだ。

メールに添付されているワードやエクセル、PDFファイルは、Gmailなら「グーグルドキュメント」上で閲覧が可能だった。表示の崩れもなく、ウィンドウズOS上でグーグルドキュメントを使った時と表示の状況は同じだった。オンラインストレージの「ドロップボックス」「シュガーシンク」などは、ウェブサイト上からサーバーにアクセスし、各種サービスが利用できた。

パソコンのHDDには一切アクセスできない。ブラウザー経由でWebサイトからファイルをダウンロードすることは可能だが、保存先としてはUSBメモリーなど外部ストレージを要求される。

ウィンドウズOSからは完全に切り離された状態であり、データ連携できないがセキュリティー上はこの方が望ましいかもしれない。

日本語入力も可能だ。「Ctrlキー」を押しながらスペースキーを押すことで、日本語入力と英語入力を切り替えられる。

次回は様々なPCに導入してみる

非常に高速であり、使用感も高い。となると、本当に古いノートパソコンできちんと動作するのかに興味がわいてくる。実験結果から言えば、古いパソコンでも動作はした。ただ、いろいろと問題が発生する環境もあった。そこで次回は、スプラッシュトップOSをパソコンに実際にインストールした結果についてまとめる。

竹内亮介(たけうち・りょうすけ)
 1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。

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