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「管理職」になるのを怖がるな 会社で働くということ

キャリアカウンセラー 藤井佐和子

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 「管理職にはなりたくない」「自分にはリーダーは無理」――。そんなふうに考える若手・女性社員は少なくありません。組織の中で働き続けるためには、管理職になるという選択肢も視野に入れる必要があります。しかし、特に女性には管理職を目指すことに尻込みしがちです。管理職とはどのような存在なのか、そのためにどういう意識やスキル、行動が必要なのか。キャリアカウンセラーの藤井佐和子氏が解説します。

キャリアカウンセリングやセミナー、講演などを通じて「女性と仕事」の問題に長く携わってきましたが、近年、女性の仕事に対する意識が変化していることを実感しています。

以前は「将来結婚しても働き続けるかどうか分からない。専業主婦になるか、それともパートなどで働くか悩んでいる。そこが決まらないので、今、どう過ごしたらいいのかわからない」という相談が多かったのです。しかし、最近は「今後も働き続ける」ことを前提としている相談が増えています。

最近多い代表的な相談例をあげてみましょう。

「一生働きたいんですが、でも、今の仕事内容を若い子と一緒に50代までしているイメージではないんです。かといって、管理職を目指したいか、と言われると、そこまでではない気がします」――。長く働き続けることは前提にしつつも、「どのように働き続けるのか」が明確でないため、どうしたらいいかを模索しているのです。

収入を得るためのステージは、実は2つしかありません。「組織で働く」ことと、「自分で会社を興す、フリーランスとして働く」です。それぞれ、自分に合う働き方を選ぶことが大事ですが、「組織で働く」というキャリアプランを持っているのであれば、管理職も選択肢として入るのは当然の流れです。

しかし、以下のような理由から、管理職になることに二の足を踏む女性が多いようです。

・社内にモデルケースとなる女性管理職が少ない(またはいない)
・出世には興味が持てない
・スキルに自信がない
・子育てと両立できるか不安

「管理職イコール出世」ではない

まず理解しておきたいのは、管理職イコール出世ではないということです。「出世」という言葉は権力を連想させるようで、特に女性は「権力」「権威」など、力を持って上に立つイメージに違和感というより、嫌悪感を感じる人も多いようです。しかし、本来の管理職の意味、役割は全く違います。「会社全体を俯瞰し、組織が成果を出し続けるために、現状の問題点、課題を発見する。まずは自部門や現場での声を拾い、それをもとに、他部署と調整、提案、連携を取る。そして、実行する際には、自部門の部下が活躍できるよう、役割を与える指示、指導育成をする」――。ざっくりと言えば、このような役割を担います。

そのためにすべきことは、

1)経営的視点を身につける
2)それをもとに周囲とコミュニケーションを図る
3)部下の指導育成

この3つです。

ここには、「出世」の意味合いは含まれていませんが、当然、「権限」を持つことになります。ちなみに以下のような経験はありませんか?

「会社にとって、本当は今のままじゃだめなのに、上が動いてくれない。問題点に気付いてもいないんじゃないか?」あなたは勇気を持って意見を伝えたものの、上司から「そうは言ってもな…」「会社っていうのは…」と、結局ねじ伏せられてしまい「言っても無駄」という意識になる。

その結果、状況を見守るしかなくなり、あなたが懸念していた通りに上手くいかずに失敗…。「ほらね、だから言ったのに」と思ってしまう。

女性は女性ならでは、の気づき、勘とも呼べる問題発見能力、もっとこうしたらよくなるのに、という男性には思いつかないようなアイデアを持っています。

しかし、それがスタッフレベルだと、よほど物分かりのよい上司でない限り、意見が通らないものです。2012年7月25日に厚生労働省が発表した2011年度の雇用均等基本調査によると一般企業で管理職に占める女性の割合は8.7%。つまり、権限、決定権を持つ90%以上は男性です。単純に考えれば、女性の意見が通りづらいのは、当然のこと、と言えます。しかも、スタッフとしての女性陣の発言は、先に述べたように、男性上司が男性同士での会議において、提案をプレゼンするわけですが、女性の意見を理解している男性上司でもその人のプレゼンスキルが低かったり、周囲の同意が得られなければ、「ごめん、意見は言ったんだけど、通らなかったよ――」になります。

実績や経験という「点」が「線」になる

さて、話は戻りますが、そう考えると、女性管理職が増え、女性が発言権を持つことで、会社は変わっていきますし、また、女性にとっても活躍しやすい環境を作り上げることができるはずです。

「下を育てる、指導育成だったら興味があります」。管理職を避けて通っていた女性の相談者に「管理職としての大きな仕事は部下育成である」と言う話をすると、目を輝かせて「やってみたい」という気持ちに拍車がかかる方も多いのです。

発達心理学では、エリク・H・エリクソンはじめ多くの学者が、「人は一生をかけて、発達し続ける」という説をとなえています。つまり、人の発達は老年期まで続き、年齢に合う役割、やるべきことなどの課題があり、ひとつずつクリアしていくことで、年相応の成長につながります。

そう考えると、私自身、20代~30代前半くらいまでは、自分のことで精いっぱいだった記憶があります。何かにつけて、自信もなく、何が正解なのか、わからなくてもがき苦しんで――。目の前の辛いことは、そもそもやる意味があるのかわからずに。

しかし、この時期、たくさんの実績や経験という「点」を作ること、そして、色々悩むことは無駄ではないのです。30代半ば~40代、そして50代になると、あの経験がここにつながったんだ、というくらい、過去に作った「点」と「点」がつながり「線」になるのです。

その時期に周囲から期待される役割は、今までの経験を活かして新たな実績を作ったり、これまでの経験を周囲に役立てたりすることになります。人生の先輩として、部下や後輩を指導・育成することが求められるようになるのです。

このように考えれば、管理職になるという選択肢を、あなた自身のキャリアプランに組み込んでみることも自然なことと思うことができるようになるかもしれません。

「仕事がマンネリ化してきた」「もうこれ以上同じことの繰り返しは嫌だ」「このままでいいんだろうか。変化したい、成長したい」と思えたら、管理職にチャレンジしてみるのもいいでしょう。

「チャレンジしてみたい、でもやっぱり管理職になることで、できなかったら周囲に迷惑をかけてしまうから辞退した」という話もよく聞きます。特に子どもを持つ女性が、「私は時短だから、マネージャーなのに先に帰るのは申し訳ない」と考える事態するケースも少なくないようです。

しかし、立場が人を育ててくれます。気負わず、一人ですべての責任を負うのではなく、周囲の理解、協力を得ながら、自分らしいスタイルを築いていくことも悪くないですよ。前例が少ないことは不安かもしれませんが、一方で、自分がなりたいリーダーを自由に目指せる、と捉えることもできますから。

藤井佐和子
キャリアカウンセラー。キャリエーラ代表取締役。大手光学機器メーカー海外営業部勤務後、人材関連会社のコンサルタントとして、女性の転職をサポート。キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティー、大学生のキャリアデザインをテーマとした研修や講演を行う。カウンセリング実績は1万3000人以上。 近著に「女性社員に支持されるできる上司の働き方」(WAVE出版)

[nikkei WOMAN Online2012年8月23日掲載]

 日経WOMAN、nikkei WOMAN Online、日経ビジネスでは、男性中心の仕事社会の中で女性がリーダーとして活躍するための短期集中講座「女性マネジャーのための課長塾(第2期)を開催する。http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbsemi/0930/wom1201/

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