福島原発事故直後、20キロ圏内に2000人 東大が推計
東京大学の早野龍五教授らは9日、東京電力福島第1原子力発電所事故で漏れた放射性ヨウ素の大気中の濃度が最も高かった2011年3月14日深夜~15日深夜に、原発の20キロメートル圏内に最大で約2000人がいたとの推計結果を発表した。携帯電話に搭載された全地球測位システム(GPS)を基に、人数分布を割り出した。
事故直後の住民の避難を巡っては、住民による聞き取り調査でしか特定できず、早野教授は「客観的なデータを公開できた」と話している。
ゼンリン関連会社のゼンリンデータコム(東京・港)との共同研究成果。日本学士院が発行する英文誌(電子版)に10日掲載される。
利用者の許可を得て、携帯電話の位置情報を、個人情報が特定できないように統計化したうえで使った。このデータに国勢調査による住民数などを照らし合わせ、事故前後の原発周辺にいた住民数や人の流れを推計した。
今回、使ったデータは福島県民の約0.7%に当たる約1万4000人分。事故前の11年3月10日は原発20キロメートル圏内に約7万6000人がいたと算出した。事故後、住民らが避難を始めたが、放射性ヨウ素の濃度が最も高かったと考えられている時間帯に20キロメートル圏内に最大約2000人が残っていたとみている。
早野教授は「放射性物質の分布状況と組み合わせれば、地域での初期被曝(ひばく)の影響を評価できる可能性がある」と話す。