日産ゴーン社長「最大の脅威、自然災害でなく円高」
政府に対策訴え

日産自動車のカルロス・ゴーン社長は29日、都内で開かれた東京国際自動車会議(日経BP社主催)で講演した。その中で「(企業経営にとって)最大の脅威は自然災害ではない。円高だ」と述べ、歴史的な水準の円高の定着に危機感をあらわにした。スイスがスイスフラン高の抑制に懸命の措置をとったことを引き合いに出し、「円高のハンディキャップを是正してほしい」と日本政府などに訴えた。
ゴーン社長は今の円高を「びっくりするような競争力のない水準」と指摘した。「グローバル経済が混乱するなかで、すべての通貨に対し円が強くなっている」という。
自動車業界は今年、東日本大震災、タイ大洪水という2つの大きな自然災害に自動車業界は見舞われたが、ゴーン社長は「円高がはるかに深刻な脅威だ」と話した。日本勢が強かった中東地域でシェアを落としている例を挙げ、「円高で競争力が低下したが、まったく是正されていない」と演台の机をたたきながら熱弁を振るった。
ゴーン社長は円高是正に「解決策はある」と指摘。スイス国立銀行(中央銀行)がスイスフラン相場に対ユーロで上限を設け、これを超えた場合に無制限介入する方針を打ち出した事例を紹介し「小さな国のスイスが示したフラン高を容認しないという強い姿勢を市場は尊重した」と述べた。世界第3位の経済大国、日本の為替対策の動きの鈍さを暗に批判した。