米地裁「図書の全文複写は公共の利益」 グーグル事業巡り
インターネット検索最大手、米グーグルによる図書の全文複写プロジェクトを差し止める訴訟で、米ニューヨーク連邦地裁は14日、米作家協会の訴えを棄却した。利用者が本を見つけやすくなるなど公共の利益にかなうと判断、著作権侵害にならないとした。
対象となったのは、グーグルが図書館の蔵書を電子化し、検索結果をネットで表示する「グーグル・ブックス」。このサービスでは本の中身が一部しか表示されない。米作家協会は上訴する予定だ。仮に判決が確定した場合でも、データが作家らの許可なく売られるわけではないので、現在流通している日本の出版社の電子書籍への影響は限定的とみられる。
米国には、著作物の利用が「フェアユース(公正利用)」であれば著作権者の了解を得なくてもよいという規定がある。グーグルのプロジェクトは商業目的だが、検索を重ねても全文は表示できないようにするなど、電子書籍ビジネスに悪影響が出ないよう工夫している点が評価された。
訴訟が起きた2005年当時に比べると、現在は電子書籍市場が拡大し、消費者がネット経由で本を買う頻度も増えた。市場環境が変わるなか、「ネット検索で探しやすくなれば書籍が売れて著作者にもプラスだ」と判断した今回の判決は、著作権保護の考え方に一石を投じる可能性もある。