楽天、スマホ効果で最高益 年後半に利用急増
12年12月期、5%増の715億円に
楽天が再び業績の拡大ペースを速めている。14日発表した2012年12月期連結決算は経常利益が前の期比5%増の715億円と過去最高を更新した。成長鈍化の懸念も出ていた主力事業のインターネット通販がスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)経由の買い物需要を取り込んで、10~12月期に伸び率を回復した。ただ、積極的に企業買収を進めた海外は赤字事業も目立ち、課題を残した。
三木谷浩史社長は同日記者会見し「モバイル経由での取扱高(利用者が売買した金額)は13年末に全体の42%、その先は50%を超える」と語った。楽天の12年12月期の売上高は17%増の4434億円。スマホによる利用がけん引し、従来型の携帯電話、タブレットも合わせたモバイルでの取扱高が10~12月期に前年同期比で4割強伸びた。
ネット通販に宿泊予約サービスなどを合わせた「国内電子商取引(EC)」の取扱高は10~12月期に前年同期比15%増えた。増加率は1~3月期に21%、4~6月期は14%、7~9月期は12%と最近は減速傾向にあった。だがスマホ向けのサイトで商品を見やすくしたり、検索機能を強化したりして盛り返した。
例えば、「楽天市場」や「楽天トラベル」などを1つの窓口から利用できるアプリ(応用ソフト)「gateway」では、複数のサービスを利用する会員を増やした。スマホから買い物をするとポイントを手厚くもらえるようにするなど、販促面での取り組みもスマホ利用を促した。
営業利益は前の期に比べ2%増の722億円。電子書籍や海外事業は先行投資で事業部門としての赤字が膨らんでいる。宿泊予約の楽天トラベルでは06年以降の費用計上に関する会計上のミスが表面化、是正のために営業費用が28億円増えたが、ネット通販と金融事業が好調で補った。
金融事業では利用額に応じて値引きに使えるポイントがもらえる「楽天カード」の収益が拡大。不振だった楽天証券も、昨年11月後半からの株式市況の好転で持ち直した。金融部門の営業利益は237億円と8割強増え、営業利益全体の2割を占めた。
最終損益は194億円の黒字(前の期は22億円の赤字)になった。金融事業の再編による損失が一巡した。ただ、米国や英国事業での構造改革にからみ、事業損益が見通しを下回り、減損損失などが出た。海外関連の特別損失が255億円に膨らんで、純利益は過去最高だった09年12月期(535億円)の水準を大きく下回った。
楽天は13年12月期から国際会計基準に移行し、「のれん」の償却がなくなるなどの影響がでる。同社は今期の業績見通しを公表していない。
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