「原発の必要性変わらない」 佐々木・東芝社長
15年度の売上高1兆円「達成に遅れも」
東芝の佐々木則夫社長は14日、日本経済新聞などのインタビューに応じ「2015年度に原子力事業の売上高を1兆円にする目標が遅れる可能性がある」と述べ、原発事業の中期計画見直しを示唆した。福島第1原子力発電所の事故で世界的に原発計画の見直しが進む可能性がある。しかし、エネルギー消費が膨らむ新興国の導入機運は根強い。「長期的には原発の必要性は変わらない」として経営の柱とする戦略は変えない考えを示した。
東芝は原子力事業を成長戦略の柱に据え、15年度までに世界受注を39基、10年3月期に約5700億円だった同事業の連結売上高を1兆円に引き上げる目標を掲げていた。佐々木社長は「当社が狙っている案件で中止になるという話は来ていない」と前置きしたうえで「防災や設計の規制強化で着工が遅れるところも出てくる」と予測した。
原子力事業の収益計画を下方修正しても「震災復興需要に応じたインフラ事業やデジタル家電などの拡大で落ち込みを補える」とみる。火力や水力、太陽光などほかの発電事業の拡大も期待できるという。
東芝が合弁で参加している米テキサス州の原発計画も「(年内の予定だった)認可の取得手続きが進んでおり、中止になることはない」と語った。同計画に出資する意向だった東京電力は参加を断念せざるを得ない状況だが「海外の電力会社から東芝と組みたいとの話がある」と強調。柔軟にパートナーを組み替えていく方針を示した。
11年3月期の連結業績は「売上高(6兆6000億円)や営業利益(2500億円)は予想を少し下回るが、純利益(1000億円)は上ぶれする」とした。06年に買収した米ウエスチングハウス(WH)ののれん代の減損処理の可能性については「収益の多くを既存プラントと燃料事業から得ており、新設案件が遅れても減損の必要はない」との見方を示した。
原発の安全性への懸念が広がっているが「WHの最新の原子炉は外部電源がなくても72時間の冷却が可能な技術が確立されている」と語り、深刻な事故を回避できる仕組みを強調した。
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