若手俳優の登竜門は「朝ドラ、戦隊、少女マンガ」
日経エンタテインメント! ブレイク7大登竜門最新事情(前編)
NHK朝ドラ 20%連発の高視聴率が魅力、相手役はタイミングも重要
2010年の『ゲゲゲの女房』でヒロインの夫役を演じた向井理が大ブレイク(この作品には漫画家のアシスタント役で斎藤工と窪田正孝も出演)。以来、主役の女優だけでなく、福士蒼汰(『あまちゃん』)や東出昌大(『ごちそうさん』)など、毎回、助演の男性俳優も大きな注目を集めるようになった。
連続ドラマの視聴率が全体的に伸び悩む中、いまだ20%を超えることも珍しくない高視聴率で、日本全国の幅広い層へと一気に知名度を広げられることが最大のメリット。NHKのドラマ出身ということで、クリーンなイメージをもたれる利点もある。「出られるなら、やはりヒロインの相手役が理想。ただし、相手役ができるのは基本一度しかないので、役者にとってはタイミングが重要になる」(トップコートの内藤のぞみ氏)。
最近では『マッサン』で主人公夫婦の娘と恋に落ちながら、出征して戦死した森野一馬役の堀井新太、『まれ』でヒロインの弟・一徹を演じる葉山奨之など、周囲の俳優への注目度も高まっている。家族役などは間隔を空ければ別の作品にも出られるため、窪田正孝のように再登場で一気に人気に火が付くケースは今後もありそうだ。
なお、毎回大規模なオーディションが行われるヒロイン役と違い、相手役の男性はオーディションが行われることが少なく、スタッフの「一本釣り」で決まることもある。このため、映画や舞台など日頃の活動で、いかに印象を残せるかがカギを握るようだ。
ライダー&戦隊ヒーロー 佐藤健、松坂桃李らを輩出、ブレイクの鍵は「卒業後」
平成ライダーシリーズ第1弾『クウガ』(2000~2001年)主演のオダギリジョーをはじめ、多くの人気俳優を輩出した「仮面ライダーシリーズ」と「スーパー戦隊シリーズ」。これまでライダーは佐藤健(07~08年『仮面ライダー電王』)、瀬戸康史(08~09年『仮面ライダーキバ』)、菅田将暉、福士蒼汰、戦隊ヒーローからは松坂桃李(08~09年『侍戦隊シンケンジャー』)、千葉雄大、志尊淳らを送り出しており、今では若手男性俳優の登竜門として、すっかり定着している。
メインターゲットの子どもだけでなく、一緒に視聴している親やコアなヒーローファンの10代~20代女性の高い人気を獲得できること、1年かけてドラマと映画で同じ役を演じて実力を磨けることなどがライダー&戦隊役のメリット。また、イベントを通じて人前に立つ機会も多く、ファンを大切にする姿勢も自然に身につくという。このため、経験の少ない若手にはうってつけの仕事と言える。
とはいえ、本来は子ども向けの作品のため認知度の拡大は限定的で、ライダーや戦隊ヒーローの主役1本だけで誰もが知る俳優へと飛躍するのは難しい。主演級に育った俳優は、早くから「ライダー/戦隊後」を見据えたマネジメントを行ってきた。綾野剛・松坂桃李・菅田将暉・福士蒼汰などはいずれも、NHKの朝ドラを経て知名度を拡大させ、本格的なブレイクに至っている。
放送中の『仮面ライダードライブ』は竹内涼真、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』では西川俊介が主演を務める。ともに素材の評価は高いため、シリーズ終了後にどんな展開を見せるかが鍵となりそうだ。
少女マンガ映画 学園ドラマに代わる新登竜門、親友・ライバル役から飛躍も
日本映画界ではここ数年、少女マンガ原作の学園恋愛モノが、好調な興行成績を残している。昨年から今年にかけて、剛力彩芽と山崎賢人がW主演した"元祖「壁ドン」系映画"の『L・DK』、本田翼と東出昌大のコンビによる『アオハライド』、山下智久が主演して小松菜奈がヒロインを演じた『近キョリ恋愛』、福士蒼汰と有村架純のコンビによる『ストロボ・エッジ』などが大ヒットした。
シネコンを中心に若い世代の観客層を誘引する、日本映画の「新鉱脈」となったが、20代男性俳優の出演機会としても注目すべき、新たな登竜門になったと言える。
今後公開される注目作は、9月19日公開の『ヒロイン失格』(原作は幸田もも子の『別冊マーガレット』連載)。このジャンルの作品に出演が相次ぐ山崎賢人と坂口健太郎が、主演の桐谷美玲と三角関係を繰り広げる。10月には、『スプラウト』『青夏』などの作品で知られる南波あつこの『別冊フレンド』連載作品を映画化した『先輩と彼女』が公開。こちらはドラマ『表参道高校合唱部!』でも共演している志尊淳と芳根京子が再びコンビに。同級生役には、『仮面ライダーウィザード』(12~13年)に出演した戸塚純貴が起用された。
このジャンルは、複数の男女の群像劇スタイルが定番のため、親友・ライバル役も注目される。好助演した『アオハライド』の吉沢亮と千葉雄大、『ストロボ・エッジ』の山田裕貴と入江甚儀などは活躍の場を広げそうだ。
(ライター 高倉文紀)
[日経エンタテインメント! 2015年9月号の記事を再構成]
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