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丸ごとレビュー キーボード付きで2万円台 8.9型Windowsタブレット

フリーライター 片田貴之

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注文生産方式で実績のあるパソコンメーカーのマウスコンピューターは、ウィンドウズ8.1搭載の8.9型タブレット「WN891」を発売した。注目すべきは3万円を切るという価格だ。8型クラスの格安タブレットでは珍しくない価格帯だが、保護カバーにもなる専用の着脱式キーボードと、「Office Home and Business 2013」が付いて直販価格2万9800円(税、送料込み)というのはかなり安い。家電量販店や同社の直販窓口などで購入できる。タブレットとノートパソコンの両スタイルで使える「2in1」の機種だが、実力は価格通りか、それ以上か。他社の人気8型機と比べてどうか。細部までチェックし、使い勝手を検証した。

基本性能は8型クラスだがインタフェースは有利

まずは、タブレットとしての使い勝手をみていこう。液晶は8.9型。8型や10型以上が多いウィンドウズタブレットとの中では珍しいサイズだ。パネルは視野角の広いIPS方式。解像度は8型で多く採用されている1280×800ドットのWXGAとなっている。同解像度の8型と比べると画面が大きい分、デスクトップの細かい操作がしやすく感じられる。ボディーは背面がラバーコーティングされているので持ちやすい。ただし、重さは481グラムあり、厚さは約10.9ミリある。400グラム前後で10ミリを切る8型に比べると、やや重く感じられた。数字では80グラム程度の差なのだが、幅や奥行きがあるので、片手で持ちにくく感じるのだ。

主な仕様は、CPUがAtom Z3735F(動作周波数1.33ギガヘルツ)、メモリーは2ギガバイト、ストレージは32ギガバイトのeMMCを備える。バッテリー駆動時間は6時間(JEITA測定法2.0)で、実力は格安8型タブレットと同程度である。

端子は、映像出力用にマイクロHDMIをはじめ、マイクロSDメモリーカードスロットを備える。注目したいのはUSB端子。AC電源兼用のマイクロUSBに加え、通常サイズのUSB2.0を搭載しているのだ。8型タブレットでは、「マイクロUSB端子が1つ」という構成が定番だが、本機は2つ、しかも1つが通常サイズのUSB端子というのはありがたい。変換アダプター無しで、USBメモリーやマウスなどの周辺機器を挿して使えるのは、大きなアドバンテージだろう。

動作に関しては同クラスのAtom搭載機と差はなく、ウィンドウズの基本操作で重く感じられることはない。ストリーミング動画の再生でややもたつくこともあったが、このクラスでは許容範囲内だ。タッチ操作に関してはマルチタッチ対応で反応も良好。低反射の液晶保護フィルムが装着済みで、見やすく指紋が付きにくいという点も好感が持てた。

操作で気になったのが「Windowsキー」の位置だ。通常は、液晶ベゼルに「旗のマーク」で配置されているが、本機は側面にボタンとして配置されている。同社の8型「WN801V2」など、この配置をしている機種も少なからずあるが、使いやすいとはいえない。見た目が電源ボタンと似ており、誤操作しやすい。縦横の持ち方を変えると、押しにくい位置になってしまうことがあり、残念に思えた。

32ギガバイトというストレージは容量的に不安だが、マイクロSDカードスロットが補助の役割を果たしそうだ。SDXC規格に対応しているので、64ギガや128ギガバイトのマイクロSDを用意すれば、倍以上の容量を確保できる。USBメモリーや「OneDrive」などのクラウドストレージを併用すれば、データ保存に関する容量不足は回避できそうだ。

着脱式キーボードで操作性アップ

次に、着脱式キーボードを着けて、ノートPCスタイルで操作してみた。着脱は、マイクロソフト「サーフェス」などと同じマグネット式。ブルートゥースではなく、端子による直接接続となっている。キーボードを装着すると、そのままカバーとして機能する。使うときは背面カバーを三角に折り畳んでスタンドとして本体を支える。構造上、画面の角度調整はできないが、タッチ操作で背面側に倒れることはなく、しっかり固定できた。

キーボードは小ぶりだが、5列64キーでピッチ幅は実測で18ミリある。ストロークも想像より深く、打鍵感もそこそこ良い。配置に関しても標準的だが、エンターキーが小さく、バックスペースとの間に変則サイズのキーが入っている点で、やや使いにくく感じた。そこさえ慣れれば、カバー付きのキーボードとしては良好な部類といえそうだ。タッチパッドはボタン一体型のタイプを採用。細かいポインティングでは重宝するが、操作面が狭い上に反応が今一つ。画面を直接タッチした方が、楽に操作できるときもあった。

キーボードを装着した状態では、通常のノートPCと同じく、「閉じるとスリープ、開けると復帰」という動作をする。カバー自体は生地のようなソフトな質感。封筒のようにマグネットで蓋がされるため、携帯時に誤って開くことも無い。キーボードを装着すると、重さは295グラム増しとなる。計776グラムで、厚さはタブレット時の倍になるが、ノートPCと考えれば十分に軽い部類といえる。

よく言えばちょうど良い8.9型

本機は、インタフェースの充実や着脱式キーボードなど魅力も多い。一方で、Windowsボタンがサイドにある、ACアダプターのプラグ部分が折り畳めない、センサーが加速度のみでGPS・輝度センサー・コンパス機能が無いなど、細かい不満も残った。それでも3万円を切る価格を考慮すれば納得できる範囲といえる。

ウィンドウズタブレットの中で、最も新製品が多いのが、8型の低価格モデルだ。CPUはAtom、OSは「ウィンドウズ8.1 with Bing」、ストレージは32~64ギガバイトで2万円台から4万円ぐらいの機種が多数ある。10型以上になると、キーボードやデジタイザーペンが付属した機種が多く、CPUも高性能で価格も張るものが多い。その中間サイズである本機は、良く言えばバランスが取れている機種だが、見方を変えると8型と同等の性能なのに重く、画面の広さでは10型に及ばないというポジションである。

タブレット単体としては微妙だが、キーボード付きの2in1モデルとして考えると話は変わってくる。8型では、まともなサイズのキーボードと一体になる機種は無い。キーボード付きは10型以上が多いので、本機はコンパクトで携帯性で勝る。しかも、Officeまでついて税込み3万円を切る価格は魅力的だ。とにかく2in1ノートを安く手に入れたい人にお薦めできる機種だ。

片田貴之(かただ・たかゆき)
 1971年東京生まれ。朝日新聞社「サイアス」専属ライターからフリーランスライターとして独立。読売新聞社、朝日新聞社、日経BP社などの媒体で製品レビューや解説記事を執筆。先端技術から子ども向け科学記事まで、優しく読みやすくが信条。

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