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日産、「ノート」に託す難局打開 8年ぶり全面改良

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日産自動車は24日、小型車「ノート」を8年ぶりに全面改良し、12月23日に発売する予定だと発表した。これまでもノートは日産が「有事」に直面する時期に登場し、局面を打開してきた。同社は事業構造改革計画で日本を「コアマーケット」と位置づけ、再強化を打ち出している。3代目の新型ノートは劣勢の母国市場でシェア挽回を担う最重要モデルとなる。

「『eパワー』は日本のお客さまの厳しい目によって認められ、累計で43万台を販売した。第2世代のeパワーをノートに搭載し、eパワーファンをさらに増やしたい」。24日に開いたオンライン発表会でアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は、独自のハイブリッド(HV)システムのeパワーの隆盛が「日本市場発」である点を強調した。今後は中国や欧州でeパワーを展開する方針も示した。

新型ノートの最大の売りはeパワーの進化だ。eパワーはガソリンエンジンで発電しモーターで駆動する。電気自動車(EV)のように滑らかで力強く加速する。2016年に一部改良したノートに初搭載し、大ヒットした。

第2世代のeパワーはインバーターを第1世代よりも40%小型化し、30%軽くした。エンジン効率も高め、加速性能と燃費向上を両立させた。先進運転支援技術「プロパイロット」など多くの安全技術も盛り込み、電動化と先進運転支援技術を日本でのブランド再興の両輪に据える戦略を象徴するモデルに仕上げた。

新型ノートは3グレードをそろえ、価格は202万9500円(税込み)から218万6800円(同)。国内販売はライフサイクル平均で月間8000台を見込む。

初代ノートが登場したのは05年1月。1999年に発表した「日産リバイバルプラン」で経営危機を脱した日産が、経営の正常化を狙った中計「日産180」で打ち出した新型車6車種の最後を飾った。荷室が広く実用性が高い小型車の分野を開拓したホンダの「フィット」に対抗するモデルだった。その後、欧州などでも展開される世界戦略車に育った。

2代目は東日本大震災やタイ大洪水などでサプライチェーンが寸断され、為替の超円高で苦しんだ12年に発売された。

当時の日産は経営危機にあった仏ルノー傘下のルノーサムスン自動車を救済するため、多目的スポーツ車(SUV)「ローグ」の生産を日産自動車九州から韓国などに移管した。ノートはその穴を埋めるため、追浜工場から九州に移された。

九州で初めて生産される日産の小型車として工場稼働率の低下を防ぎつつ、中国や韓国、九州など東アジア域内から部品を調達して超円高への抵抗力を高める戦略モデルと位置付けられた。

そして今、日産の電動化戦略でEVと並ぶ柱となったeパワーだが、市場を切り開いたのもノートだった。16年に一部改良し、eパワーを搭載したノートは日本でヒットした。元会長のカルロス・ゴーン被告の拡大戦略のあおりで日本への新車投入は後回しにされ、目玉車種の枯渇に苦しんだ国内ディーラーには干天の慈雨となった。18年には登録車(排気量660cc超)の車名別の新車販売台数で日産車として初の首位になった。

日産が国内販売で低迷する主な要因は、日本で人気のHV車の品ぞろえが少ないことだった。日産はゴーン被告がトヨタ自動車が先導するHVへの追随を嫌い、国内ディーラーから要望が強いHV車を投入できずにいた。シリーズ式というHVの技術を用いるeパワーは、日産の技術者たちが水面下で粘り強く研究を重ねた成果だった。HVと言わずに「eパワー」と命名し、ようやく商品として日の目を見た。

日産幹部は当初、eパワーに懐疑的で海外展開に慎重だった。しかし日本での大ヒットを受けて手のひらを返し、日産の電動車を支える主軸に位置付け直した。ノートの貢献にほかならない。

待望の主力車の登場で、焦点は国内販売立て直しの実行策に移る。

「99年以降、グローバル投資を優先し、国内への新モデルや新技術の投入に空白期間が生まれ、長年ご愛顧いただいているホームマーケットのお客さまのご期待に沿えない結果となりました」。日産の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は20年5月に公表した事業構造改革計画「日産ネクスト」で過去の日本戦略を反省し、母国市場を再強化する方針を打ち出した。

世界市場をコアマーケットとそれ以外に分け、日本は北米と中国と並ぶコアに位置付けた。今後は毎年新車を投入し、25%の電動車比率(20年3月期)を60%(24年3月期)に引き上げる。先進運転支援技術やEVで先導する方針も掲げた。

日本には研究開発(R&D)の総本山があり、主要な部品・材料メーカーも集まる。かつて日産はステークホルダーを維持するうえで国内生産100万台を防衛ラインとしていた。国内生産を守り、為替変動に業績が左右されにくくするには、母国で一定の販売規模を維持する必要がある。

ただ、日産はこれまで何度も母国市場の強化を打ち出しながら、ディーラーの期待を裏切り続けた歴史がある。直近では「日産パワー88」で掲げた国内市場での「明確な2位」という目標だ。

日産車の日本での保有台数は99年3月期の693万台をピークに減少が続き、12年3月期には565万台に落ち込んだ。17年3月期に600万台に回復する青写真を描いたが、低迷が続いている。日本強化どころか国内への新型車の投入がゼロだった年もあり、ディーラーの失望感は深い。

日産ネクストでは商品戦略として「グローバルに魅力と競争力を発揮できるモデルにリソースを集中」と明記した。具体的には中型車クラスの「C/Dセグメント」やEVやスポーツ車に力を入れ、地域限定モデルは最小化する。日本の売れ筋は小型車であり今後の品ぞろえに不安が残る。

19年のメーカー別の新車販売台数(軽自動車を含む)で日産はシェアは11%の5位に沈んだ。軽自動車が主力のスズキやダイハツ工業にも売り負けている。国内ディーラーを失望させてきた「オオカミ少年」を脱し、失ったシェアを奪い取る「オオカミ」に化けられるか。局面打開をノートだけに頼れば、過去の日本強化戦略と同じ末路をたどりかねない。内田日産の覚悟が試される。

(星正道)

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