イヤホン落とさないで ワイヤレス型、駅で紛失急増
ワイヤレスイヤホンの落とし物が駅で増えている。電車に乗り降りする際に線路に落とすケースも多く、JR東日本によると、東京近郊だけで3カ月間で約950個が線路に落ちた。数センチほどと小型のため拾うのが難しく、鉄道会社が注意を呼びかけている。
「小さいため、線路の石に紛れるなどして見つけにくい」。JR東日本東京支社の担当者は、相次ぐワイヤレスイヤホンの落とし物に頭を悩ませる。耳の中に収まる数センチサイズのものが主流で、小さすぎてホーム上から線路の落とし物を拾うのに使う棒状の器具「マジックハンド」ではつかみにくい。線路のバラスト(砕石)内に入り込んで見つからず、終電後に駅員が線路に下りて捜索することもある。
JR東日本では4月、「落としちゃイヤ~ホン!!」との啓発キャンペーンを始めたが、同支社管内の駅で7~9月に線路へのワイヤレスイヤホンの落下が約950件起きた。線路への落とし物全体の約4分の1を占め、収まる気配がない。
自分で拾おうと線路におりれば事故やダイヤの乱れにつながりかねない。同支社は11月から駅構内の掲示板やSNS(交流サイト)などで「線路に落とさないで」と呼びかける予定で、「落とした際は駅員に声をかけ、絶対に線路にはおりないで」と求めている。
落とし物の届け出も増えている。京王電鉄のワイヤレスイヤホンの届け出数は8月は126件、9月は152件で、10月は16日時点で120件に達した。JR西日本でも届け出が9月に1000件を超え、前年同月の1.7倍に増えた。数万円と高価なものも多く、「落とし物が届いていないか」との問い合わせも677件と多いという。
「落とした本人を特定するのが難しい」というのが小田急電鉄の担当者だ。同一製品のワイヤレスイヤホンの落とし物が多く、落とした日時や場所が明確でなければ引き渡しに悩むケースも少なくないという。
落下防ぐアイテムや片方紛失補償も
完全ワイヤレスイヤホンは2016年に米アップルが発売したスマホ「iPhone7」がイヤホン端子を廃止したことなどをきっかけに人気が広がった。近距離無線通信規格「ブルートゥース」でスマホなどと接続し、左右独立したイヤホンを装着すればコードに煩わされずに音楽や動画を楽しめる。
調査会社のGfkジャパンによると、完全ワイヤレスイヤホンの19年の販売数量は前年比2倍の約330万本で、イヤホン・ヘッドホン全体の16%を占めた。
落下を防ぐアイテムも数多く出ている。左右のイヤホンに装着して1本につなげるストラップや、イヤホンに取り付けて耳にかける「イヤーフック」などで、専門店「e☆イヤホン」の担当者は「落下防止用のストラップがあらかじめ付いている商品もある」と話す。
イヤホンを片方だけ紛失するケースもある。JVCケンウッドは、同社で扱う一部のワイヤレスイヤホンについて、片方紛失した場合に補償するサービスを提供している。購入から1年以内であれば1回だけ5千円の負担で新品と交換できる。一部のメーカーでは紛失した片側のイヤホンのみを再購入できる。