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日鉄が即時抗告へ 元徴用工訴訟、資産差し押さえに

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日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた韓国の元徴用工訴訟を巡り、同社に資産差し押さえの書類が届いたとみなす「公示送達」の効力が4日に生じた。日鉄は同日、不服を申し立てる即時抗告をすると表明した。ルールを覆す係争は投資リスクを高め、日本企業の韓国離れにつながる。

訴訟は朝鮮半島出身の元労働者らが日本統治下で日本企業に強制的に働かされたなどと訴え、原告が勝訴していた。原告団は日鉄が鉄鋼大手ポスコと合弁で設立した企業の株式約19万4千株を差し押さえている。4日に公示送達の効力が生じたのはそのうち約8万株だ。

日鉄が11日までに韓国の地裁に抗告すれば売却手続きを止められる。地裁が棄却した場合、日鉄は再抗告もできる。一連の手続きで実際に売却命令が出る時期は数カ月程度遅れ、秋以降にずれ込む可能性がある。

日鉄の宮本勝弘副社長は4日、4~6月期決算の記者会見で「国家間の正式な合意の日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決されたと理解している。外交交渉も踏まえ政府と連携して対処する。即時抗告をする予定だ」と述べた。

韓国外務省報道官は4日「外交を通じた解決へ努力を続ける。日本政府のより積極的な呼応を期待する」と述べた。韓国政府は判決の尊重を主張し打開策は示していない。文在寅(ムン・ジェイン)政権は譲歩と受け止められる対応を避け、議会も対日強硬論が多い。

日本政府は日鉄の資産が現金化される場合、報復措置をとる構えだ。菅義偉官房長官は4日に「あらゆる選択肢を視野に毅然と対応したい。現金化に至れば深刻な状況を招く」と強調した。査証(ビザ)停止や金融制裁、輸出管理厳格化が俎上(そじょう)に載る。

韓国側の対応は同国で活動する日本企業の大きなリスクになる。1965年には日韓や両国民間の請求権は「完全かつ最終的に解決」と協定で確認した。日本企業の活動は同協定を大前提にしてきた。

2003年に発効した日韓投資協定の2条では、財産の設立や経営などで自国の投資家より不利にならない待遇を相手国の投資家に与えると定める。日本政府関係者は「基本理念がうやむやになれば日本企業は安心して投資できない」と話す。国同士で確認したルールが一方的に覆る環境は企業には危険だからだ。

19年に輸出管理を厳格化すると韓国では不買運動もあった。その後、日産自動車ファーストリテイリング傘下の「ジーユー」は韓国市場から撤退を決めた。反日感情も募り、日本企業には難しい市場になっている。

韓国では日鉄以外にも日本企業への賠償を求める裁判が相次いだ。韓国側が日鉄の資産売却に踏み切れば、他企業も同様の対応を受けかねない。

日本政府は国際司法裁判所や世界銀行傘下の投資紛争解決国際センターへの提訴も視野に入れる。とはいえ裁判や仲裁は当事国双方の同意が必要になり、実現性が乏しい。韓国政府が打開に動かなければ、日韓の対立はさらに深刻になる。

(ソウル=恩地洋介)

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