「避難勧告」廃止、「指示」に一本化へ 逃げ遅れ防ぐ

政府は、災害の危険が切迫している場合に自治体が出す避難情報のうち「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化する方針を固めた。これまで避難勧告を出していたタイミングで避難指示を発表することになる。
近年、大規模な豪雨災害が相次ぐなか、避難を促す情報をより分かりやすく整理し、住民の逃げ遅れを防ぐ。
災害対策基本法が規定する避難勧告・指示の見直しは1961年の同法制定以来初めて。政府は今後、内閣府の作業部会で見直し案を取りまとめ、21年の通常国会に災害対策基本法の改正案提出を目指す。
5段階の警戒レベルに基づく現在の制度では、災害発生の危険が高まった「レベル3」の段階で自治体が「避難準備・高齢者等避難開始」を出し、高齢者など避難に時間がかかる住民は避難を開始する。
雨が強まるなどして「レベル4」に相当する状況になると、自治体は避難にかかる時間を考慮して「避難勧告」を発表し、対象地区の住民はすぐに避難を始める必要がある。さらに災害発生が切迫した場合は「避難指示(緊急)」を出し、重ねて避難を促す。
避難勧告と避難指示はともにレベル4相当とされ、違いが分かりにくいと指摘されていた。国が2019年の台風19号で人的被害があった市町村の住民約3千人を対象に行ったアンケート調査で、避難勧告・指示の内容を両方正しく認識していたのは17.7%にとどまった。避難を開始すべきタイミングを本来の避難勧告ではなく、避難指示と誤解している人も25.4%に上った。
国は3月末、19年に相次いだ台風を巡る検証報告書を取りまとめ、避難勧告・指示の一本化を含めた見直しについて年内に結論を出す方針を決めた。内閣府に設置した作業部会で検討を進めており、内閣府は近く、作業部会に見直し案を提示する。