JAL、「空飛ぶクルマ」参入へ住商・米ベルと提携
日本航空(JAL)は12日、「空飛ぶクルマ」で住友商事やヘリコプター大手の米ベル・テキストロンと提携すると発表した。日本やアジアを対象に「eVTOL」と呼ばれる電動垂直離着陸機を使ったサービスの調査に取り組む。世界で機体の開発が進む空飛ぶクルマだが、運航管理など実用化には課題も多い。航空会社のノウハウを生かし成長市場に参入する。
一般的な航空機やヘリコプターと違い、滑走路が不要で騒音も少ないeVTOLは、渋滞が激しい都市部などを素早く手軽に移動できる次世代の交通手段として注目が高まっている。デロイトトーマツによると、空飛ぶクルマを活用したサービスの市場規模は10年後の2030年に国内で6000億円、世界では8.1兆円に拡大すると推計されている。
ベル社はヘリコプターの製造大手。垂直上昇の分野で高い技術を持ち、大型の有人飛行用eVTOL「ネクサス」を開発している。住商は19年にベル社と業務提携を結んだ。パイロットを含め5人まで運べる機体を使い、20年代半ばにも実用化を目指している。物流や観光分野での市場調査を共同で進めている。
JALは住商・ベルと調査やインフラ構築に関する検討を進める。サービス開始に向け、官公庁の許認可を巡る交渉やメンテナンスなど事業モデルづくりでも協力する。
国際線を中心に利用者の増加が見込まれる航空業界だが、国内線は人口減少に伴う市場の縮小が予想される。成長に向けた新規事業の創出が課題となる中、有望視されているのがeVTOLを使った輸送サービスで、ANAホールディングス(HD)は将来的な旅客輸送を目指し、ドローン(小型無人機)による物資輸送の実証実験などを国内外で繰り返している。
JALも航空管制や安全確保といった旅客機の運航で培ったノウハウが生かせるとみて、成長市場の取り込みを図る。