MIT伊藤教授、辞任へ 少女虐待の米富豪から資金
【ニューヨーク=宮本岳則】米マサチューセッツ工科大学(MIT)は7日、傘下の研究所のメディアラボで所長を務める伊藤穣一教授が辞表を提出したと発表した。伊藤氏には少女への性的虐待などの罪で起訴された米富豪ジェフリー・エプスタイン氏(8月に自殺)の性犯罪歴を知りながら資金支援を受けた疑いが浮上。これに抗議して2人の研究者が辞任を表明する事態になっていた。
エプスタイン氏は7月、少女への性的虐待をした容疑でニューヨーク南地区の連邦地検に起訴された。同氏の幅広い交友関係が次々と明らかになるなか、伊藤氏は8月中旬、メディアラボと自身の投資ファンドがエプスタイン氏から資金提供を受けていたと公表。被害者らに謝罪していた。MITも同月下旬に、大学全体で80万ドル(約8400万円)の寄付を受けていたと公表した。
ただ、今回の辞任劇は米誌ニューヨーカー(電子版)による6日の報道がきっかけだった。伊藤氏とメディアラボの同僚が、エプスタイン氏を寄付提供者として不適格な人物と認識し、記録上は匿名とするなど、交友関係を意図的に隠す行為をしていたと報じた。MIT側は米誌の報道を受けて調査を始めている。
エプスタイン氏は08年に同様の罪で実刑判決を言い渡され、性犯罪者リストにも登録されていた。米誌の報道が事実であれば、伊藤氏らはエプスタイン氏の性犯罪歴を知りながら、資金提供を受けていた可能性がある。伊藤氏は8月に公表した謝罪文では、性的虐待事件について「知らなかった」と釈明していた。
トランプ米大統領などとの交友関係で知られるエプスタイン氏は、豊富な資金力をテコに科学技術の分野にも人脈を広げていた。科学分野の慈善家を自称し、同氏の財団は資金支援先として有力大学や研究所の名前を挙げていた。米紙マイアミ・ヘラルドによると、MITに並ぶ米名門大の1つ、ハーバード大も寄付を受けていたという。