米の対中関税第4弾、スマホなど12月に発動先送り
【ワシントン=鳳山太成、北京=原田逸策】米通商代表部(USTR)は13日、ほぼすべての中国製品に制裁関税を広げる「第4弾」について、スマートフォンやノートパソコン、玩具など特定品目の発動を12月15日に先送りすると発表した。第4弾の関税自体は予定通り9月1日に発動するが、代表的な消費財を当面除外することで米消費者への影響を抑える。
約3千億ドル(約32兆円)分の中国製品を対象としていた第4弾は消費財が4割を占めており、実際に発動すれば米国の個人消費や中国を中心としたサプライチェーン(供給網)への影響が甚大だ。主要品目の発動を12月に延期することで、米中両政府には協議の余地が生まれる。
追加関税の一部先送り発表を受け、13日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が一時、前日比519ドル高の2万6426ドルまで上昇した。個別株でみると、関税の影響が特に懸念されていたアップルが一時6%近くまで上がり、他のハイテク株も軒並み上昇した。
USTRによると、12月に発動を先送りするのはスマホやノートパソコンのほか、ゲーム機、特定の玩具、コンピューター用モニター、特定の靴や衣服。また5月中旬に発表した約3800品目の原案から、健康や安全、安全保障に関わる製品は除外したという。
トランプ米大統領は同日、追加関税を一部先送りする理由について「クリスマスシーズンのためにやる。万が一にも関税の一部が米国の消費者に与えうる影響を考えた」と語った。
一方、中国商務省は13日夜、劉鶴副首相がUSTRのライトハイザー代表やムニューシン米財務長官らと電話協議したと発表した。中国は米国の追加関税第4弾に改めて反対した。双方は今後2週間以内にもう1度、電話協議することで一致した。
トランプ政権は6月の公聴会などで募った産業界の意見を踏まえて、一部製品の発動延期を決めた。「iPhone」を手掛けるアップルなど第4弾の対象製品を扱う米企業は、コスト増や値上がりによる販売減につながるとして関税に反対していた。
特定品目の関税発動がクリスマス商戦の仕入れに影響しない12月15日まで先送りされることになったことを受け、メーカーや小売店で構成する米アパレル・フットウエア協会は同日、「一部関税の先送りを歓迎する」との声明を発表した。
ただ第4弾自体は9月に発動する。幅広い中国製品に10%の関税が上乗せされることで値上がりなど影響が一部で広がる可能性がある。米中交渉に進展がなければ12月にスマホやパソコンなどへ関税が発動される。
トランプ大統領は6月末の米中首脳会談で第4弾の発動を棚上げし、貿易交渉を再開すると表明した。7月末に上海で閣僚級協議を開いたが、中国が米農産品の購入拡大を明言しなかったなどの理由で、8月1日に第4弾を9月に発動すると表明していた。
関税発動の一部先送りを受け、外国為替市場では安全通貨として前日まで買われていた円を手放す動きが広がり、急速に円安・ドル高が進んだ。円は対ドルで一時、1ドル=106円98銭前後まで下落し、前日の終値より1円以上の円安水準となった。

2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。