野村HD、CEO報酬3割減額 情報漏洩の担当部署廃止
野村ホールディングス(HD)は24日、東京証券取引所の市場区分見直しに関する情報漏洩問題について、永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)の月額報酬の3割を3カ月間減額することを含めた関係者の処分と不祥事の舞台となった部署の廃止など再発防止策を発表した。永井氏は「情報の不適切な取り扱いがあった。おわび申し上げます」と陳謝した。野村証券との取引を一時停止する動きも出始めており、信頼回復には時間がかかりそうだ。
外部の弁護士などが構成する特別調査チームが経緯の報告書をまとめた。今回の問題に絡んで金融庁は野村HDと野村証券に対し、金融商品取引法に基づく業務改善命令を出す方針だ。
報告書によると東証が進める市場区分の再編について、有識者懇談会のメンバーだった野村総合研究所の研究員が3月5日に野村証券のストラテジストに、時価総額基準に関する議論の進捗や自身の見方などを伝達。ストラテジストが日本株の営業担当者などにこの内容を教え、そのうち3人が33の機関投資家らに「特別な情報」として提供していた。
調査委は「明確な法令違反があったわけではない」としつつ、情報の管理のあり方や問題を組織として防げなかったことについて「市場のゲートキーパーとしての役割を果たすという意識がいまだ全社員に徹底されていない」と指摘した。
報告書がまとまったことを受け、野村ホールディングスはこの日開いた取締役会で社内処分を発表した。森田敏夫共同グループ最高執行責任者(COO)も月額報酬の2割を3カ月間減額するなど、ホールディングスと野村証券を合わせて7人の報酬を減らす。また、関係した社員や上長は別途、社内規定に基づいて処分したとしている。
再発防止については、不祥事の舞台となった「グローバル・マーケッツ営業二部」を廃止し、企業分析などを担当する調査部門と、投資家からの注文執行の機能を分離する。調査部門は投資家への情報提供のみに注力し、執行部隊は最良執行のための技術開発などに徹することで同様の事態が起こらないようにした。コンプライアンスの研修なども徹底する。
もっとも、これで解決するほど問題は簡単ではない。野村証券は2012年に自社が主幹事を務める企業の公募増資に関する情報を投資家に漏らし、金融庁から金融商品取引法に基づく業務改善命令を受けている。そのときも再発防止を約束したが、似た構図で再び問題を起こしてしまった。永井CEOは「全社員に対するコンプライアンス意識の徹底に尽きる」と繰り返した。
今回の問題を受け、社債の引受証券会社を変更する動きが出始めている。大阪ガスは月内に発行条件を決める30年債と40年債について、野村証券を主幹事証券から除外した。6月に社債発行を予定するホンダファイナンスや東京地下鉄、不二製油グループ本社は、野村証券を主幹事証券から外す可能性も含めて検討を始めた。
野村HDは前期に1000億円を超える最終赤字を計上し、海外事業の縮小や国内店舗の統廃合などリストラに着手している。そこに不祥事による行政処分が重なる見込みで、現場の士気は下がっている。かつて国内で圧倒的な存在感を放った最大手証券だが、当面は信頼回復に専念することになる。