韓国の水産物の輸入規制、日本が逆転敗訴 WTO最終審

【ジュネーブ=細川倫太郎、ソウル=鈴木壮太郎】韓国による福島など8県産の水産物の輸入禁止は不当として日本が提訴している問題で、世界貿易機関(WTO)は11日、韓国の措置を妥当とする最終判決を下した。一審では日本の主張を認め、韓国に是正を求めていたが、日本の逆転敗訴となった。
これについて韓国政府は12日「高く評価し歓迎する」という声明を発表した。現行の輸入規制措置を維持し、福島など8県からの全ての水産物の輸入禁止を続ける。
最終審にあたるWTOの上級委員会は、韓国の輸入禁止措置を不当とした一審の紛争処理小委員会(パネル)の判断を破棄した。消費者保護のためとして韓国が取った措置は「必要以上に貿易制限的で、不当な差別」とした第一審の解釈は誤っているとの見解を示した。WTOの紛争処理は二審制のため「最終審」の判断となり、韓国の禁輸措置が続く。
韓国は2011年3月の東京電力福島第1原子力発電所の事故後、放射性物質の漏出を理由に福島や岩手など8県産の水産物の輸入を禁止した。さらに水産物以外の日本産食品の検査を強化するなど段階的に規制を広げた。日本は科学的根拠がないとして撤回を求めたが、韓国が拒否したため、15年にWTOに提訴していた。
第一審にあたるパネルは18年2月、輸入禁止は不当な差別として韓国に是正を勧告した。韓国はこの判決を不服として上訴していた。今回の最終判決はパネルの判決を覆した形だ。

原発事故後、韓国以外でも多くの国が日本産食品の輸入を規制した。農林水産省によると、一時は最大54カ国・地域にのぼった。3月時点でもアジアを中心に23カ国・地域が規制を続ける。特に中国は東京や千葉、福島などのすべての食品の輸入を停止するなど、厳しい措置を取っている。