若手社員「就活やり直すなら商社・金融よりメーカー」
入社1~3年目のキャリア意識調査(上)
もう一度、就職活動をやり直すなら金融や商社ではなくメーカーに入りたい――。学生サイトU22開設に際し日本経済新聞社は就職情報大手のディスコ(東京・文京)と共同調査を実施、入社1~3年の社員に就活をやり直すならどの企業に入りたいか聞いた。1位はトヨタ自動車、2位はソニーなどメーカーが上位を占めた。大学生の人気ランキングで上位の商社や金融の順位は下位となった。単純比較はできないものの、就職活動時と社会人になった後では企業の評価が変わる傾向が鮮明になった。これから就活を本格化する学生は幅広く情報を集めて会社選びをすることが納得できる就職につながるといえそうだ。
ディスコが運営する就活情報サイト「キャリタス就活」に登録し、就職活動モニターをしていた入社1~3年目(2016~18年卒)の若手社員を対象にキャリア意識を調査した。設問のなかで、「キャリタス就活」に登録している19年卒予定の大学生・大学院生を対象に実施した就職希望企業人気ランキングの上位30社を示し、若手社員に現在入りたい企業を選んでもらい比較した。

大学生のランキングではトヨタ自動車は5位、ソニーは11位だった。9位だった資生堂は3位となり、女性だけに絞るとトップだった。花王は28位から4位、味の素は25位から8位と、メーカーが上位になった。
「やる気は経営状態で変わる」
トヨタを選んだ繊維メーカーの男性(16年卒)は、「入社前はやる気さえあれば、好きな仕事ならどうにかなると思っていたが、実際は経営状態によってやる気が変わる」と話す。「味の素などの食品メーカーに入りたい。AI(人工知能)が普及しても、食品に関わる仕事は人間の関与する余地が残る」(18年卒、女性、サービス)など将来性を評価する声も目立った。
一方、商社や金融はメーカーより低位にとどまった。学生のランキングでは2位の伊藤忠商事は17位に、三菱商事も6位から14位になった。8位だった東京海上日動火災保険は19位に、三菱UFJ銀行は4位から25位になった。他にも1位だった日本航空は12位に、3位だった全日本空輸も6位だった。
就活時には、学生の間での知名度やブランド力が高い企業を選びがちだが、社会人になると経営環境や将来性を重視する傾向に変わる。
「商社、給与高いが忙しい」「金融は将来不安」
商社は給与の満足度は高めだが、残業時間や休暇取得への不満が目立つ。転職を検討しているという社員(18年卒、男性)からは「社風が古くさい。仕事が忙しい。多少給料が下がっても残業がなく有給を取りやすい会社に行きたい」との意見が出た。
金融では就職した人の36.5%が仕事内容に不満を抱えており、業種別で最も多かった。転職検討者も多く、「年功序列で若手は仕事量が多いのに給料が低い」(17年卒、女性)と待遇改善を訴える。窓口業務や事務作業などは「今後、AIに仕事が取って代わられる」(16年卒、女性)との業界の行く末を心配する声も多かった。
仕事に役立つ大学での勉強

大学時代に就職後を見据えて、やっておいた方が良い活動を聞いたところ、「学生の本分である勉強を大切にすべし」と説く若手社員が多かった。
定番の「アルバイト」(2位)や近年急増している「インターンシップ」(3位)を押しのけ、「ゼミ・専門分野の研究」が文系・理系出身者ともに1位だった。
「大学での研究活動は、マーケティング、開発、プレゼンなどといった、メーカーの研究開発職に求められる能力の基礎になる」(18年卒、男性・メーカー)。「時間のある学生のうちに自分の興味のある分野や適性を定めておくことが大事」(18年卒、男性・金融)など、振り返ってみると、勉強の大切さを実感する声が目立った。
身につけておくべき資格・スキルでは、1位が「TOEIC」(56.4%)で英語系の強さが際立ったほか、表計算ソフト「エクセル」などの操作能力を評価する「MOS」(マイクロソフトオフィススペシャリスト、19.5%)が4位に入った。「プログラミングスキル」(18.9%)は文系からも、勧める声が多かった。
学生時代の過ごし方について、学習院大学キャリアセンターの淡野健担当事務長は「(幅広い教養を身につける)リベラルアーツも有効だ。グローバル化への対応など、勉強や活動が大学時代で完結するのではなく、入社後のキャリアにつながっていくことを意識した方が良い」と話している。
若手社員の調査は日本経済新聞社とディスコが1月16~27日にインターネットで実施した。大学生時代にディスコが運営する就活情報サイト「キャリタス就活」に登録し、就職活動モニターをしていた入社1~3年目が対象で1148人から回答を得た。内訳は男性629人、女性519人、文系出身714人、理系434人。新卒で入社した企業の規模を従業員数でみると、299人以下が13.9%、300~999人が19.2%、1000~4999人が26.4%、5000人以上が40.5%だった。
就活生のランキングはディスコが17年12月1日~18年3月21日、「キャリタス就活2019」会員の大学3年生、修士1年生を対象に実施し5671人から回答を得た。内訳は男性2997人、女性2674人、文理別では文系3376人、理系2050人、その他245人だった。
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