オリンパス、改革に拍車 「物言う株主」経営陣に
オリンパスが11日、大胆な経営体制の変更を発表した。4月1日付で竹内康雄副社長兼最高財務責任者(CFO)が社長兼最高経営責任者(CEO)に就任。併せて指名委員会等設置会社へ移行する。さらに「物言う株主」を自ら取締役に招き、企業価値向上のカタリスト(触媒)とする。2011年の不正会計問題から7年。ガバナンス強化へアクセルを踏む。
日本企業が自ら物言う株主を招くのは珍しい。両者の関係はこれまで株式保有をテコに圧力をかける側と防衛する側で対峙していた。なぜオリンパスは大胆な手を打ったのか。考えられるのが海外投資家から厳しく指弾された過去の不正会計の総括だ。
「真のグローバルメドテックカンパニーとなる」。竹内氏は同日開いた記者会見で強調した。大株主である米有力アクティビスト、バリューアクト・キャピタルのロバート・ヘイル氏を経営陣に加えればグローバル化の加速が期待できる。
竹内氏はヘイル氏について「目指す方向性が一致していたので一緒にやっていくことを決めた」と会社側から積極的に受け入れたと明かす。
オリンパスは1990年代の財テク失敗で抱えた最大1000億円に上る含み損を簿外に隠蔽。経営陣が代々関与し「経営の中心部分が腐っていた」(第三者委員会による報告書)と、日本企業全体のガバナンス不信を招く事件となった。
発覚後の12年3月期の連結最終損益は489億円の赤字に沈み、株価は一時1000円を割る水準まで下落した。そこからみると業績、株価とも回復基調だが、主力の消化器内視鏡で世界シェアトップを握る割には物足りなさも残る。
19年3月期は連結売上高が前期比横ばいの7900億円で、純利益は260億円と半減する見通しだ。内視鏡が製品サイクル後半となり販売が伸び悩む中、会計不祥事に絡む訴訟費用等も重い。今期だけで300億円強の利益圧迫要因だ。
「本来利益率の高い内視鏡をもつにもかかわらず利益水準が低い」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小宮知希氏)体質との決別は待ったなしだ。
オリンパスの株価は11日、4005円と前日比10%急上昇した。「取締役になれば簡単に売却できず長期コミットメントが期待できる」(いちごアセットマネジメント吉田憲一郎副社長)と、まずは物言う株主の「手腕」に期待が集まる。
■建設的な対話重視
バリューアクトは「物言う株主」として著名な存在だ。運用総額は約165億ドル(約1兆8千億円、QUICK・ファクトセット調べ)。表立ってプロキシーファイト(委任状争奪戦)を仕掛けて企業と対立せず、投資先企業と協調して企業戦略を提案するスタイルが持ち味だ。米マイクロソフトや英ロールス・ロイス・グループにも投資実績があり、マイクロソフトのクラウド戦略推進を後押ししたとされる。
オリンパスへの投資が明らかになったのは昨年5月末。5%超を保有する株主に義務付けられる大量保有報告書で明らかになった。当時「オリンパスは日本の最初の投資先として理想的な会社だ」と声明を出した。
これまでの物言う株主にとって「理想的」なのは資産を多く抱える割に株価が低く、手っ取り早く稼げる投資先だった。00年代にはスティール・パートナーズがアデランスやサッポロホールディングスの株式を買い集め圧力をかけた。
今回、バリューアクトは性急なリストラなどは求めず会社が作成した医療事業再編など中長期の「企業変革プラン」について「賛同してサポートしてくれている」(竹内氏)存在という。
13年から日本で始まったコーポレートガバナンス(企業統治)改革を経て、物言う株主と会社が共に中長期の企業価値向上を進める新しい時代の幕開けになるか注目される。