「ゲノム編集女児」中国の研究者が発表
【香港=宮住達朗】中国の南方科技大学(広東省深圳市)の賀建奎副教授は28日、遺伝情報をゲノム編集という技術で改変した受精卵から、世界で初めて子を誕生させたと発表した。エイズにかかっていた父のウイルスが子にうつらないよう、遺伝子に手を加えた。生まれた双子の女児は健康だという。
27日から香港で開催されているヒトゲノム編集国際会議で発表した。不妊治療中の8組のカップルから受精卵の提供を受け「ほかにも一人が妊娠中だ」と明らかにした。今後18年間、生まれた双子の経過を観察する。賀氏は「エイズは特に途上国で患者が多く深刻な病気であり、子に感染しないようゲノム編集を使う必要性を感じた」と意義を強調した。
人間への応用に先立ち動物を使って手法の安全性や効果を確認したことを、実験データを示して説明した。生まれた女児の細胞がエイズに耐性を持つことを示す結果も得られたとしている。
父から生まれてくる子にエイズが感染するリスクを減らす技術は既にある。会議では賀氏の取り組みの必要性に疑問の声が出た。
ゲノム編集技術そのものも、より安全で効率の高い方法が研究されており開発途上だ。会議では研究者の多くが「時期尚早だ」などと批判的な意見を述べた。賀氏は「生命倫理上の問題がないか米国の専門家らに相談し、両親からは十分な同意を得て踏み切った」と述べ、手順に問題はなかったとの認識を示した。