コインチェック、顧客の資産「返せない恐れ」
仮想通貨取引所大手のコインチェック(東京・渋谷)が顧客から預かる約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した問題で、NEMを保有していない顧客を含めて資産が失われる可能性があることが27日、分かった。被害が拡大する恐れがある。一方、警視庁はコインチェックから不正アクセスによる流出の報告を受け、情報収集に着手した。
コインチェックは26日未明に不正アクセスにより、顧客から預かるほぼ全てのNEMが流出。午後には全ての仮想通貨と日本円の出金を停止し、ビットコイン以外の仮想通貨の売買も中止した。
同社は仮想通貨の国内大手取引所の一つ。口座数などは非公表だが「預かり資産は数千億円規模」(業界関係者)とされる。
和田晃一良社長は26日深夜に開いた記者会見で、最悪のケースとして「顧客の資産を毀損し、返せないこと」を挙げた。顧客の資産が全て失われる可能性については「基本的にはないと考えているが、それを含めて確認中」と言葉を濁した。
同社が国際団体から推奨されていた、安全性の高い「マルチシグ」と呼ぶセキュリティー技術を導入していなかったことも明らかになった。大塚雄介・最高執行責任者(COO)は「認識はしており、やらねばならないとも思っていた」と弁明したが、利用者保護が後回しになっていた形だ。
こうしたなか、警視庁は情報収集に着手。今後、同社から流出の経緯を聞き取るほか、システムへのアクセス記録や仮想通貨の保管状況などを詳しく調べるとみられる。
警視庁は2017年12月、コインチェックを含む仮想通貨取引所10社とサイバー犯罪防止に向けた国内初の協定を結んだ。コインチェックは改正資金決済法に基づいて、金融庁への登録を申請中の「みなし業者」だが、顧客数が多いことから協定に参加している。
協定では取引所がサイバー犯罪を把握した場合、警視庁へ速やかに通報して捜査に必要な情報を提供する一方、同庁は被害拡大や再発を防ぐ支援をするとしている。同庁幹部は「被害の実態を把握するため、必要な調査を進める」としている。