個人軸に2800億円増税 法人税は増減ゼロ
27年ぶり新税創設 与党税制改正大綱
自民、公明両党は14日、2018年度の与党税制改正大綱を決定した。年収850万円超の会社員への所得増税やたばこ増税で、約2800億円の増税となる。森林保護や観光インフラ整備の財源とする27年ぶりの新たな国税も創設。個人の増税が際立つ一方、法人税は賃上げや設備投資を進める企業に減税するメニューが並び、増減はほぼゼロだった。
政府は月内に税制改正大綱を閣議決定し、来年1月中旬にも召集予定の次期通常国会に関連法案を提出する。
ほぼ全ての税制改正が実現した平年度ベースで2800億円規模の増税となる。内訳は国税1600億円、地方税1200億円。所得税やたばこ税の増税で3700億円税収が増え、事業承継税制の見直しなどで900億円減税となる。第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは家計の可処分所得に及ぼす影響額を試算。平年度ベースで約700億円下押しすると推計する。
所得税改革では年収850万円超の会社員らが増税となる。対象は給与所得を得る人の4%にあたる約230万人で増税額は900億円となる。
多様な働き方を後押しするため、誰でも使える基礎控除を10万円増やす。一方で会社員向けの給与所得控除は年収850万円以下は10万円減らし、850万を超える人は控除額を195万円で頭打ちにする。高額の年金を得る高齢者の公的年金等控除も減額する。
自民党税制調査会の宮沢洋一会長は14日の記者会見で所得増税について「国民の理解は得られると思う」と強調。19年度改正以降でも給与所得控除を見直し、基礎控除を手厚くする所得税改革を検討する方針を示した。
たばこ税は8年ぶりに増税する。紙巻きたばこは18年10月から4年かけて1本当たり3円増税する。消費税率を上げる19年は税率を据え置く。加熱式たばこは5年間で段階的に税率を引き上げ、紙巻きの7~9割程度の税額とする。たばこ税は一連の見直しで増税額は約2400億円にのぼる見通し。
1992年に導入された地価税以来、国税としては27年ぶりとなる新税も創設する。日本を出国する旅行者らから1人当たり1回1000円を徴収する国際観光旅客税で、2019年1月から実施し年400億円程度の増税となる。森林保護の財源とする森林環境税は24年度から導入。住民税に年1000円を上乗せして徴収する。
法人税は既存の税制を見直し、増減税がほぼ同額の税収中立となった。生産性の向上を後押しするため賃上げや設備投資に積極的な企業は税負担を減らす。大企業は3%以上の賃上げなどの条件を満たすと最大20%減税。中小企業は1.5%の賃上げで減税する。賃上げなど一定の条件を満たさない企業は一部の税優遇を使えないようにする。
中小企業の代替わりを促すため、事業承継税制を10年間の特例措置として拡充する。非上場企業の株式を経営者から後継者が引き継ぐ場合、相続税を全額猶予する。
地方消費税を各都道府県に振り分ける基準も見直す。東京などの大都市へ税収が集中することを防ぐため人口に応じた配分基準を17.5%から50%に変更。東京都は年1千億円程度の減収となる。