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土岐麻子の「旅嫌い」救った、小さな白いスーツケース

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NIKKEI STYLE

上質なサウンドと柔らかな歌声で音楽ファンをひきつける土岐麻子さん。資生堂や日産、ユニクロといった有名企業からCMソングの"指名"が後を絶たないことからも、彼女の歌声の魅力がわかる。ミュージシャンという仕事柄、国内外を文字通り飛び回っている彼女がこだわるのは、スーツケースをはじめとした旅行グッズ。「昔は旅行が嫌いだった」という土岐さんを変えた、彼女の歌のようなスマートなグッズの数々を紹介してくれた。

旅行グッズ専門店で見つけたカバンとポーチ

1年を通して、ツアーやプロモーションで全国各地を移動するので、旅行グッズ選び、中でもカバン選びは重要です。今使っているスーツケースは、1年半ほど前に手に入れました。たまたま原宿駅近くの明治通りを歩いていた時に、旅行グッズ専門ショップがあるのを見つけて、フラフラっと入ってしまい、このスーツケースや小物を買ったんです。

スーツケースを選んだポイントは大きさ。機内に持ち込める、1泊くらいのサイズが欲しかった。もう一回り大きいサイズも持っていますが、ここ最近はどんどん荷物が小さくなり、今では3~4泊ならこの大きさで事足ります。白や素材感も割と珍しく、手荷物の受取所で間違いにくいのもいいですね。

また専門店だったのでケースの中を仕分けるソフトケースやポーチもそろえられるのも魅力でした。同メーカーだとピタリと収まるので気持ちがいい。

中で仕切りのついた両開きの衣類ケースは、片面は使用前、もう片方に使用した衣料を入れられる優れもの。以前は別々に袋に入れていたのですが、「使ったモノは後でしまおう」と思っているうちに、入れ忘れてしまうことも。実は、慌てて部屋を出た時に、下着類を入れた袋をホテルに忘れて……。すごく恥ずかしい思いをしたこともあるんです(苦笑)。その点、それぞれのポケットに「clean」「laundry」と書かれたこのポーチなら確実だし、出し入れも簡単。忘れ物も防げます。

◇ ◇ ◇

土岐さんがスーツケースを購入したショップは、「FLIGHT 001」(フライトワン)。1998年に米国で生まれた「トラベルコンセプトストア」で、日本では原宿店をはじめ4店舗を展開している。

スーツケースは機内持ち込みサイズの「Dash スーツケース」(品番05711-06)。「内装は片側はハンガーを付帯した取り外し可能なオーガナイザーとなっているため、滞在先では仕切りを外してそのままクローゼット等にかけて使用することができます」(日本展開を行うエース・マーケティング部 山田絢音さん)。空港等でスーツケースを開いた際も中身が丸見えにならない内装構造もポイントだという。

ポーチは「SPACEPAK PRINTED -Underwear―」。フライトワンで人気のパッキンケースシリーズ「スペースパック」の肌着ケース。二層構造になっており、洗濯物と未着用のものの仕分けが簡単に行える(内側にそれぞれ「clean」「laundry」と書かれている)。本体側面に空気穴を搭載しているので、余分な空気も抜くことができる。

◇ ◇ ◇

滞在時間の短いホテルで居心地のいい空間をつくるために

ツアーやプロモーションでは、同じホテルに何日も滞在することは、まずありません。それにホテルにチェックインするのは、仕事が全てが終わってからなので、夜遅くになってしまいます。翌朝にはチェックアウトするから、ホテルの滞在時間はとても短いんです。

だから、部屋に入って短時間で自分の居心地の良い空間をつくることは、翌日のためにもとても重要。今では、ホテルの部屋に入ったらすぐにスーツケースを開けて、化粧品ポーチを兼ねている取り外し式の中仕切りを外してバスルームにつるし、翌日着る洋服をハンガーにかけ、替えの靴を出す。たったこれだけ(笑)。

私なりの旅先ルーティンにのっとって、システマチックにやれば、あっという間に自分の空間になるので、煩わしさもありません。やることがシンプルになると、慌てることがなくなり、その分、部屋でコンサートの準備をしたり、のんびりしたりする時間が持てるようになりました。おかげでストレスもぐっと減りました。

荷物を軽くすると、頭の中も整理される

得意げに旅行グッズを紹介しておきながらなんですが、数年前までは旅は嫌いでした(笑)。荷物を詰めたり、旅先でどう過ごせばいいかプランを立てたりするのが面倒で、プロモーションやツアーで地方に行くことも苦痛でしたね。とにかく心配性で、少しでも生活が変わると不安を感じてしまうんです。

でも、行ってしまえば意外となんとかなる。たとえ何かを忘れても、驚くほど辺境の地でもない限り、その場で調達できますからね。そんな経験を少しずつ繰り返すことで、少しずつ"免疫"がついたのかな。

それに、あるとき気づいたんです。旅先に限らず、机の上や部屋の中にモノが"とっちらかっている"ときは、頭の中もそうなってることが多いなって。持ち物を軽くしてスッキリさせることで、旅先での心配事も減っていくし、自分の頭の中も整理される。一石二鳥だなと思いました。

「本当に自分に必要か」と熟考してからパッケージするようになると、自分に合うモノもおのずと見えてくるようになります。以前は化粧品やヘアケア用品もごそっとひとそろえ(笑)、美顔器など、かさばって重たいものもすべて持って行ったのですが、今、持っていくのはいつも使っているクリームとドライヤーだけ(笑)。それさえあれば、旅先のお手入れは十分だとわかったんです。

iPhoneで書いたら歌詞が変わった

旅行グッズに限らず、モノ選びっていろいろなところに影響が出ると思います。

実はニューアルバム「PINK」の歌詞は、全てiPhoneで書きました。全編をスマートフォン(スマホ)で書き上げたのは本作が初めてです。

以前はノートに書いていましたが、今は生活の中心にスマホがあるといっても過言じゃないほど身近ですよね。何かを調べたり情報を得たりするのはもちろん、LINEでは会話みたいなやりとりもするから、スマホで文字を打つのがより密接になったと感じます。

スマホでは誰かに何かを伝える行為がとても多いせいか、スマホで書いてみると、自然に誰かにメッセージを送るような歌詞が書けた。前作(2015年発表の「Bittersweet」)が「私小説」のような作品だったので、大きな変化だと思います。作るためのモノが変われば、できあがるモノも変わってくる。

「PINK」のテーマは「シティ・ポップ」です。私にとってのシティ・ポップの原点は、子どもの頃に聴いた山下達郎さんや吉田美奈子さんたち。彼らの音楽を聴くと、景色が鮮やかに変わっていくのを感じた。自分がいる世界が、一瞬にしてきれいなものに変わったんです。

その気持ちは大人になった今も変わりません。聴いてくださる方に、そんな素晴らしい体験をしてほしくて、アルバムのタイトルを私にとって夢見るような世界を連想させる「PINK」にしました。

アルバムを携えて、4月からはライブツアーという旅がまた始まります。お気に入りの旅行グッズに助けられながら、訪ねる街を一瞬でも夢見るような色に染められたらいいですね。

土岐麻子(ときあさこ)
カリスマ的な人気を誇ったバンド、Cymbalsのリードボーカルとして活躍したのち、2004年にソロデビュー。父はジャズサックス奏者の土岐英史氏。本人が出演した「ユニクロ」のCMをはじめ、日産自動車「新型TEANA」、資生堂「エリクシール シュペリエル」など、多数のCMソングを担当。また、柔らかで魅力的な声を生かしてナレーションやテレビ番組のナビゲーターを務めるなど、「声のスペシャリスト」としても活躍。4月14日 仙台を皮切りに「TOKI ASAKO LIVE TOUR 2017"POP UP PINK"」が開催される。

(文 橘川有子/写真 藤本和史)

私のモノ語り」のバックナンバーもご覧ください。

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