JR九州、区間別の利用状況を初公表 路線維持へ地元議論促す
JR九州は7月31日、22路線76区間の1日・1キロメートルあたりの2016年度の乗車人員(輸送密度)を初めて公表した。平均1000人未満だったのは肥薩線や吉都線、指宿枕崎線などの8路線13区間で、多くは九州南部のローカル線だ。JR九州の青柳俊彦社長は「路線を廃止するために出したわけではない」とし、鉄道ネットワークの維持に向けて地元で議論を促す考えを強調した。
経営が悪化した旧国鉄の分割時に、鉄道からバスへの転換を促された基準=輸送密度4000人以下=を下回る区間は▼日豊線▼筑肥線▼宮崎空港線▼筑豊線▼日田彦山線▼後藤寺線▼久大線▼唐津線▼豊肥線▼肥薩線▼三角線▼吉都線▼指宿枕崎線▼日南線の14路線で区間は32にのぼった。
このうち1000人を割り込んだのは▼筑肥線▼筑豊線▼日田彦山線▼豊肥線▼肥薩線▼吉都線▼指宿枕崎線▼日南線の8路線。南九州の路線が目立ち、肥薩線は最も利用の多い吉松(鹿児島県湧水町)―隼人(同県霧島市)の区間で758人。吉都線は466人。日南線の油津(宮崎県日南市)―志布志(鹿児島県志布志市)は222人だった。
青柳社長は記者会見で「輸送密度が少ないところを廃止するために出したわけではない。鉄道ネットワークを維持するために今後も努力していく」と述べた。一方で「(自治体が線路設備を取得しJRが運行する)上下分離などがこの先、発生するかもしれない。九州の鉄道の状況を今のうちに正しく認識してもらいたい」といい、今回のデータも参考に自治体や住民と鉄道のあり方を巡る議論を活発にする意向を示した。
沿線人口の増加や電化などで利用が進んだ区間もある。代表的な幹線の1つ、鹿児島線では門司港(北九州市)―鹿児島(鹿児島市)の輸送密度は3万4432人。JR九州が発足した1987年度から約4割増えた。篠栗線の吉塚(福岡市)―桂川(福岡県桂川町)も2万1550人と倍増した。
JR九州は31日、九州北部豪雨で大分県日田市内で橋梁が流失した久大線について、来年夏をメドに復旧させると発表した。国土交通省などから冬場の渇水期以外の工事許可が出たため、当初見込みより復旧時期を早める。今後設計するため、建設費用は未定とした。
一方、日田彦山線は復旧方法を検討している段階。青柳俊彦社長は「復旧まで年単位、もしくはそれ以上の期間になるのではないか」と述べた。
豪華寝台列車「ななつ星in九州」は予定通り8月22日から運行するが、久大線不通で一部ルートを変更。3泊4日のコースでは1日目に日豊線を通り、宇佐や別府へ立ち寄る。4日目は肥薩線で日本三大車窓の1つ、霧島連山などの景色を楽しめるルートにする。
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青柳社長は31日、フリーゲージトレイン(軌間可変電車)の導入が困難になった九州新幹線長崎ルートの運行方式についても言及。在来線にもう1本レールをひいて新幹線と同じレールの幅でも走れるようにする「ミニ新幹線方式」についても、「ある程度列車を止めて工事をしないといけない。橋梁などについても架け替えないといけないといった問題が出てくる」と指摘した。