近畿、働き手世代6.2%減 15年国勢調査確定値
総務省が26日発表した2015年国勢調査の確定値によると、近畿2府4県の人口は2072万人と10年の前回調査から17万7千人(0.85%)減少した。増加から減少に転じた大阪のほか、滋賀を除く4府県の減少率が拡大し、近畿全体でも68年ぶりに減少した。働き手の生産年齢人口(15~64歳)も縮小し、1236万人と82万人(6.2%)減った。少子高齢化は厳しさを増している。
国勢調査は5年に1度実施しており、今回は15年10月時点で調べた。近畿の人口が減少に転じたのは戦後間もない1947年調査以来だ。
生産年齢人口が大きく減少することで、今後、近畿の活力がそがれる恐れがある。時間当たりの労働生産性を引き上げ、女性や高齢者らの労働参加率を高める必要がある。
全体の人口を府県別にみると、前回調査まで人口が増えていた府県のうち、大阪府が2万5千人(0.3%)の減少に転じた。滋賀県の人口増加率も2.2%から0.2%に縮小した。前回調査までに人口減少の局面に入っていた京都府や兵庫県など4府県も軒並み人口の減少率が高まった。2月の速報値から近畿の人口は約2600人下方修正された。
近畿の人口が減少に転じるなか、目立ったのは通勤や買い物に便利な都心部の急激な人口増加だ。近畿で人口増加率が最も高かったのが大阪市中央区の18.3%。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が10年の国勢調査を基に2%とした人口増加率の推計(予測)を大幅に上回った。
経済産業研究所の森川正之副所長は「経済に占めるサービス産業の比率が高まるなか、近畿でも人口が生産性と賃金が高い都心に当初の予測を超えて集まっている」と指摘する。大阪市では中央区のほか、キタやミナミに近い浪速区、北区、西区で人口増加率が10%を突破。神戸市でも市全体の人口が0.4%減少する一方、中央区の人口は6.9%と高い伸び率を示した。
都心部に集まる人口の主体はタワーマンションなどに住む若い家族連れや高齢者だ。東急不動産などが大阪市中央区の大阪市営地下鉄長堀橋駅すぐの場所に開発中のタワーマンション「ブランズタワー・ウェリス心斎橋」は今年1月、246戸の北棟が完成2カ月前に完売。建設中の南棟も202戸のうち7割強が成約済みだという。
和田興産が14年5月に発売した神戸市中央区のJR三ノ宮駅に近いタワーマンション「ワコーレシティ神戸三宮」も、1カ月で約470戸のうち7割を販売。通常は1年半から2年かかるところ、半年で完売した。
こうした都心部に人口が集まる分、過去にニュータウンが開発された郊外や山間部では人口減少の波が予測を超えて押し寄せている。各自治体は地方創生に絡み人口の長期見通しを社人研の人口推計を参考に策定しているが、今後は今回の国勢調査の確定値を受けて人口対策の見直しが避けられない見通しだ。
人口の減少に直面している自治体は、観光など国内外から地域内に人を呼び込む新たな産業振興や効果的な移住促進策が求められる。
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