「米国参考に復興まちづくり」 東電復興本社代表
【ニューヨーク=稲井創一】米国を訪問中の東京電力ホールディングス福島復興本社代表の石崎芳行副社長は3日、日本経済新聞社などの取材に応じ、「米国など放射性物質の汚染に見舞われた地域の復興を参考にしたい」と述べ、海外の事例を踏まえ福島の復興への取り組みを強化する考えを示した。

福島第1原子力発電所の事故で被害を受けた地域の復興を担当する石崎副社長は、復興への取り組みの前提として「失墜した信頼を取り戻すため社員一人ひとりが汗を流すことが重要」と話した。
その上で今回、避難解除区域の広がりなどに対応するため米国訪問した石崎副社長は、かつて核兵器施設からの放射性物質の被害にあった米ワシントン州を訪れ、除染技術を土壌改良に生かした成功事例を視察する。すでに一部地域でワイン向けのぶどう栽培のプロジェクトが進んでいるが、訪米を契機にそうした取り組みをさらに加速させたい考えだ。
東電は引き続き除染や廃炉に向けた作業に注力するものの、中長期的な被害地域の発展には産業の振興が不可欠とみている。今年4月には富岡町で廃炉の国際共同研究施設が運用開始となるなど、ここにきて相次ぎ廃炉関連の技術開発や研究拠点が立ち上がり「廃炉事業を中核とした街づくりも後押ししたい」(石崎副社長)と表明した。
石崎副社長は東電の首脳交代に伴い今年6月、13年1月に就任した福島復興本社代表から退任する。石崎副社長は「企業と地域住民の信頼再構築は非常に難しい。被害に遭われた方々のニーズも変化しており、迅速に対応していかなければならない」と話し、自身も特別顧問として福島に常駐し続け復興業務に取り組む考えだ。