ベルギー実行犯、大規模テロ計画か 新たな容疑者浮上
【ブリュッセル=森本学】ベルギーの首都ブリュッセルを22日襲った国際空港や地下鉄駅での連続テロの実行犯グループと、昨年11月のパリ同時テロのつながりが徐々に浮き彫りになってきた。今回は実行犯らがより大規模な爆破テロを準備していた可能性も指摘される。欧州にはびこるテロリストのネットワークの取り締まりが急務となる中、欧州連合(EU)の閣僚らは24日、ブリュッセルで緊急閣僚会合を開いた。
欧州メディアによると、捜査当局はブリュッセル国際空港で自爆した2人のうち1人をナジム・ラーシュラウィ容疑者と特定した。同容疑者はパリ同時テロの実行犯で18日逮捕されたサラ・アブデスラム容疑者とパリ事件の準備に関与したとして指名手配中だった。
地下鉄で自爆したハリド・バクラウィ容疑者も、パリ事件後に4カ月にわたって逃亡していたアブデスラム容疑者に潜伏先のアパートを提供していたことが判明。アブデスラム容疑者を軸にパリとブリュッセルのテロがつながる構図がにじむ。
捜査当局は実行犯は4人で、なお身元不明で逃走中の男の行方を追っていると明らかにしている。だが仏紙ルモンドなどは24日、5人目の容疑者がいる可能性があると報じた。地下鉄駅の監視カメラがとらえたという。
ブリュッセル連続テロの実行犯がより大規模なテロを用意していた可能性も浮上してきた。捜査当局はテロ実行犯らを空港まで送ったタクシー運転手の情報をもとに、スカルベーク地区の住宅を家宅捜索。起爆装置などとともに、多量の化学薬品アセトンや過酸化水素を押収した。これらはパリ同時テロなどでも使われた爆薬TATPの原料とされ、捜査当局は実行犯らがより多くの爆薬を手製していた可能性があるとみている。
関係国からはベルギーのテロ対応体制の不備を批判する声が上がる。トルコが15年夏にテロ実行犯の一人をシリア国境近くで拘束し、欧州へ強制送還していたことが判明。トルコのエルドアン大統領は23日、警戒を呼び掛けたがベルギーが無視して釈放したと発言し、野党が政府に説明を求める事態になった。
ベルギーメディアによると、同国のヤンボン内相とヒーンス司法相が連続テロの責任をとり辞意を表明したが、ミシェル首相は対テロへ団結が必要と受け入れを拒んだ。
ベルギーからシリアに渡って過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)の戦闘に加わった人数は12年以降で約500人と、人口比では西欧で最多。「(テロ行為の)疑いのある数千人を数百人の職員で監視している」。英紙は監視体制の粗末さを嘆くベルギー当局者の電子メールを報じた。国内の「テロリスト予備軍」への当局の対応が追いつかない。
移民文化に寛容なベルギー固有の事情もある。出身国ごとに移民居住区がモザイク状に散らばる。パリ同時テロの実行犯が生まれ育ったブリュッセル西部モレンベーク地区では街中でアラビア語が飛び交うが、移民系住民らの言語を理解できる捜査官が少ない。
こうした中、EUは24日開いた緊急閣僚会合で、ベルギー支援で結束し連携強化を探る。テロ攻撃の芽を未然につむための結束が急務だ。