英、テロ警戒レベル最高に 自爆犯は22歳
【ロンドン=小滝麻理子】英国のメイ首相は23日夜、中部マンチェスターでの自爆テロ事件で22人が死亡、59人が負傷したことを受け、テロに対する警戒レベルを現在の「シビア(厳しい)」から1段階引き上げ、5段階の最上位の「クリティカル(危機的)」にしたと発表した。さらなるテロ攻撃が懸念されることを意味しており、主要な繁華街、空港・駅など重要な施設に軍が出動し、厳戒態勢を敷く方針だ。
最上位レベルへの引き上げは史上3度目。北部スコットランドのグラスゴー空港の建物に四輪駆動車が突入し炎上した事件が起きた2007年以来となる。
メイ氏は23日午後、テロ事件が起きたマンチェスターを視察。その後、同日午前に続き2度目の治安当局を交えた閣僚会議を開催し、情勢への検討を重ねた。
23日夜、声明を読み上げたメイ氏は協議の結果、「今回のテロ事件に(自爆した犯人以外に)広範囲の個人のグループが関わっている可能性を無視できない」と話し、こうしたグループによる新たなテロが起きる恐れを示唆。「新たなテロが発生する可能性が高いだけではなく、差し迫っている恐れがある」と話し、判断の理由を説明した。
メイ氏は過度に心配はしてほしくないと国民に呼びかける一方、警戒レベルの引き上げは「妥当な措置だ」と理解を求めた。公共の場所だけでなく、コンサートやサッカーの試合などのイベントにも、警官の代わりに軍兵士を配備する方針を表明した。
一方、警察当局は同日、自爆テロの実行犯がサルマン・アベディ容疑者(22)と見られると発表した。英メディアによると同容疑者はマンチェスター生まれで、両親はリビア人の移民だと報じている。警察や情報機関がアベディ容疑者の存在を事件前から把握していたとの報道もある。これに先立ち、過激派組織「イスラム国」(IS)は犯行声明を出したが、容疑者との関連性は不明で、治安当局は慎重に調べている。23日夜は、マンチェスターをはじめ英各地で、犠牲者の追悼集会が開かれた。
欧州では近年、観光地など人混みを狙ったテロが多発。フランスやベルギーなど各国はいずれもテロに対して高い警戒レベルを保っている。これまで比較的テロ対策が盤石だった英国で、テロ警戒レベルが最上位に引き上げられたことで、近隣の欧州諸国にも衝撃が広がりそうだ。26日、27日にイタリアで開催される主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)でもテロ対策で国際社会がどれだけ連携できるかが焦点になる。