ギリシャ最大のピレウス港、民営化手続き再開 EUなどへ譲歩
【イスタンブール=佐野彰洋】ギリシャ政府が凍結していた同国最大のピレウス港の民営化手続きを再開したことが14日明らかになった。欧州連合(EU)などからの金融支援再開に向け、譲歩を示した。ロイター通信が報じた。
もともと入札に参加し、候補に残っていた5社のうち3社に最終入札への参加を求めた。3社は中国遠洋運輸(COSCO)、海運最大手APモラー・マースク傘下のAPMターミナルズ、フィリピン港湾運営インターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービシズ。
2015年1月に発足した左派のチプラス政権は国有財産の売却を否定し、民営化手続きを停止。EUなどの債権団や中国から再開を求められていた。
再開する入札手続きでは、売却する株式の比率を当初の67%から51%に引き下げる。5年以内に3億ユーロ(約400億円)を投資すれば、67%への買い増しを認める。売却先の決定は9月末以降の見込みだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、政府が見込む売却収入は最低5億ユーロ。売却する株式の比率をどの程度で計算しているかは定かではない。
アテネ近郊のピレウス港はギリシャの最大港湾で、欧州の入り口に位置する海上物流の要衝だ。COSCOはすでにコンテナ埠頭の運営権を取得し、巨額の投資を実行済みだ。中国政府も中国製品を欧州で陸揚げする戦略拠点と位置づける。
同港の売却が実現すれば、ギリシャで最大規模の民営化案件となる模様だ。独空港運営会社フラポートが優先交渉権を獲得済みの14地方空港の運営権の扱いなど、他の民営化案件に波及するかが焦点となりそうだ。
ギリシャ政府の財政資金はほぼ底をついており、12日が返済期限だった国際通貨基金(IMF)への7.5億ユーロはIMFの口座に預けてあった緊急準備金を取り崩して工面した。
政府は苦肉の策として、公営企業や地方自治体の余剰資金を中央銀行に移す法令を施行済みだ。これまでに集まったのは目標額の25億ユーロに対して、6億ユーロ程度にとどまる。資金が返ってこないことを恐れた地方自治体の大半が、政府の命令を拒否している。