ディラン氏、ノーベル賞に触れず 決定後初公演
【ラスベガス=兼松雄一郎】米シンガー・ソングライター、ボブ・ディラン氏は米西部ネバダ州ラスベガスで13日夜(日本時間14日午後)、ノーベル文学賞の受賞決定後初となるコンサートを開いた。ディラン氏がステージに登場すると、観客は総立ちとなり、大歓声で迎えた。
会場のホテル内には開演前から多くのファンが詰めかけた。50歳代以上とおぼしき落ち着いた白人夫婦が目立つ。近郊から来た自営業のキース・スコット氏(59)は「1970年代からずっとファン。ノーベル賞は正当な評価だと思うよ」と笑顔をみせた。
コンサートは着席式で、スマホの使用も一切禁止という近年では珍しい厳格な会場運営。ディラン氏は、総立ちで受賞後のメッセージを待つかのような観客に目もくれず、登場するとすぐにピアノに向かった。
「雨の日の女」「くよくよするなよ」「追憶のハイウェイ61」「イッツ・オール・オーバー・ナウ・ベイビーブルー」と続く。「運命のひとひねり」でギターを持つと会場は一気に盛り上がった。
ディラン氏は「詩人」と呼ばれる通り、かすれた声で言葉を一つ一つ慎重に曲に乗せ、ほぼ全ての曲を独白するような調子で歌い上げた。原曲よりもよりジャズやブルースに近い節回しの演奏が目立った。
アンコールに応えて代表曲「風に吹かれて」を演奏した後、最後はフランク・シナトラの「ホワイ・トライ・トゥ・チェンジ・ミー・ナウ(なぜ今僕の気持ちを変えようとするの?)」で締めた。ディラン氏は受賞決定後もコメントは出していない。放っておいてほしいと言わんばかりの選曲だった。
コンサートではノーベル賞受賞の話題だけでなく、曲間のしゃべりは一切なし。ステージは暗く、ディラン氏の顔もかろうじて見える程度。声と曲が強調される演出で「歌が全て」というパフォーマンスだった。会場はうなずきながら座って聞く客が大半で、落ち着いた雰囲気だった。