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オーストラリア、防衛産業で大型投資 今後20年で8兆円

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【シドニー=高橋香織】オーストラリア政府は4日、防衛産業への大型投資を閣議決定した。海軍軍艦の調達に今後20年で総額890億豪ドル(約8兆円)を投じる。景気や雇用対策を重視し、水上艦を国内で建造する方針も打ち出した。日本かドイツ、フランスのいずれかから調達する潜水艦の選定については国内製造比率を決め手の一つとする方針も明示した。

アボット首相は豪南部アデレードで記者会見し「造船業が切れ目なく仕事を続けられるようにする」と公約した。水上艦に関し、建造の大部分を「アデレードで行う」と述べ、400億豪ドルの予算を充てると発表した。

また、雇用維持の観点から水上艦の着工を予定より2~3年早め、護衛や輸送に用いる新型フリゲート艦は2020年、哨戒艇は18年に建造を開始することも決めた。これにより約1000人の雇用喪失を防げるという。造船業全体では20年以降、2500人規模の雇用を維持する方針だ。

艦船の数や費用についてアンドリュース国防相は「近く発表する国防白書で明らかにする」と述べた。従来の政府文書によればフリゲート艦は9隻、哨戒艇は20隻程度を建造するとみられる。

豪政府が現在のコリンズ級の代替として25年から最大12隻を調達する潜水艦をめぐっては、日独仏の三つどもえの受注合戦が本格化している。豪州に単独で潜水艦を開発する能力はなく、政府は3カ国の中から共同開発相手を来年前半に決める見通しだ。

日本は三菱重工業と川崎重工業が建造する「そうりゅう」型を基に、豪州の求める航続距離などを満たす新型潜水艦を開発する。独防衛大手ティッセンクルップ・マリンシステムズ、仏政府系軍艦製造DCNSも入札プロセスに参加している。

潜水艦は総予算が500億豪ドルに上る豪州最大の防衛調達となる。豪州経済の減速で失業率は6%台で高止まりしており、野党や労働組合は国内建造の必要性を声高に叫んでいる。

アボット氏は共同開発相手の選定に絡み「最高の性能、最適な価格、豪州での建造比率の最大化」に基づいて行うとの方針を説明した。日独仏は今年11月までに国内製造、海外製造、折衷型の3つの選択肢について、それぞれの費用や工期などを豪政府に提示する予定だ。

「自動車産業が閉鎖する一方、造船業に大きな機会が開かれた」とマクファーレン産業科学相はこの日の記者会見で強調した。アデレードを州都とする南オーストラリア州は、自動車や造船など製造業が集積する。人件費高などを理由に海外企業の撤退が相次いでおり、16年に迫る総選挙を前に、雇用対策がアボット政権の優先課題に浮上している。

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