アルゼンチン、債務返済で米ファンドと合意 5300億円支払い
【パルマス(ブラジル北部)=宮本英威】2001年の債務不履行(デフォルト)を巡り、アルゼンチン政府と全額返済を求めていた主要な米ファンドは返済案で原則合意した。政府が46億5300万ドル(約5300億円)を支払う。米裁判所が示した返済額の75%に相当し、過去に債務再編に応じた投資家よりも優遇した。
経済低迷が続くアルゼンチンにとっては債務問題の大きな節目であり、国際金融市場への復帰に向けて前進した格好だ。
アルゼンチン政府とエリオット・マネジメント、アウレリウス・キャピタルなど4ファンドは2月28日に合意した。両者の仲介を務めた米弁護士のダニエル・ポラック氏が29日発表した。
アルゼンチンのプラットガイ経済財務相は「15年間で初めて、アルゼンチンはデフォルトからの脱却を開始した」と述べた。エリオット・マネジメントは「合意に達して喜ばしい」とのコメントを公表した。
地元報道によると、引き続き合意していない小規模な投資家は残っているもよう。さらに最終的な合意はアルゼンチン議会の承認が必要となる。与党は議会で過半数を占めておらず、承認には曲折も予想される。
アルゼンチンの債務問題を巡っては、反米左派のフェルナンデス前政権時代にファンドとの交渉は滞っていた。米ファンドを「ハゲタカ」と呼んで糾弾して激しく対立してきた。
15年後半の大統領選挙で中道右派のマクリ氏が勝利して政権交代。15年12月に就任したマクリ氏は経済再建のために外資の流入が不可欠だと考えており、債務問題の解決を重要視した。1月からニューヨークで交渉が再開し、すでに複数の欧米のファンドとは合意に達していた。
ただ、米ファンドなど一部の債権者は債務削減策に納得せず、全額返済を求めて米裁判所に提訴した。14年に米裁判所が米ファンドなどの要求通り全債務の支払いを求める判断を提示。支払わない場合は債務再編に応じた他の投資家にも利息を支払ってはならないと命じた。このため、返済原資はあるのに利払いが滞る「テクニカルデフォルト」状態に陥った。