住宅・設備投資、底入れ GDP年率2.4%増
内閣府が20日発表した2015年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値では、住宅投資や設備投資が底入れし、緩やかな景気回復を支える姿が鮮明になった。4~6月期以降は賃上げの波及で、消費の拡大が持続するかどうかが焦点となる。
住宅投資や設備投資は4四半期ぶりの前期比プラスに転じ、消費増税後の悪影響が和らいでいることを示した。前期比の実質GDPへの貢献を表す「寄与度」を見ると、内需が0.8%、輸出から輸入を差し引いた外需がマイナス0.2%。内需の内訳は個人消費が0.2%、住宅投資と設備投資が0.1%だった。
個人消費はテレビや冷蔵庫といった耐久消費財をはじめ、消費増税後に落ち込んでいた品目の販売が持ち直した。ただ衣服やパソコンなどの販売は低迷し、伸び率は前期比0.4%と前の期と同じ水準にとどまった。
消費を巡る環境は改善している。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「4~6月期は実質賃金がプラスになり、消費は堅調な動きとなる」と話す。底入れしつつある住宅投資や設備投資に加え、個人消費がさらに伸びれば、景気の回復に勢いがつく。
1~3月に実質GDPへの寄与度が最も大きかったのは在庫。卸売業や小売業が抱える流通在庫が増えたことが大きい。消費意欲の回復を反映し在庫が販売増につながるかも、今後の成長率の重要なカギとなる。
一方、輸出は前期比2.4%増となり、10~12月期の3.2%増から伸びが鈍った。1~3月期は、寒波や港湾ストで米国の景気が減速したことが理由の一つ。中国も景気減速が鮮明だ。こうした海外景気の不透明さを背景に製造業は積極的な設備投資や生産を控える傾向にあり、消費の動向が重要性を増す。
一方、総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは、大幅なプラスになった。原油価格が大幅に下がり、輸入デフレーターが低下したことが大きい。景気が良くなって物価が上がり、デフレ状態を脱却したとは言い切れない。
国内の失業率は低く、有効求人倍率は高水準で安定している。雇用者報酬(実質ベース)も前年同期比で0.6%減と、前の期の0.9%減からマイナス幅が縮小している。所得増が消費や設備投資にさらに波及すれば景気回復に勢いが増し、それが本格的なデフレ脱却の前提になる。