派遣社員の働き方どう変わる(Q&A)
労働者派遣法の改正案について、派遣社員の雇用が安定するという政府の説明に対し、民主党など野党は「派遣社員の固定化を招く」と激しく反発している。法改正の影響や今後の課題をまとめた。
Q 派遣法改正案は2回廃案になった。政府が成立にこだわる理由は。
A 実際の派遣現場では、秘書や通訳など期間制限のない専門26業務か3年が期限の一般業務か曖昧なケースが少なくない。今の派遣法が成立して3年が経過する今年10月以降、26業務の扱いだった派遣社員が一般業務の判断を受けて違法派遣とみなされると、派遣先が派遣社員を直接雇用する契約が自動で成立する。直接雇用を避けたい企業が派遣の雇い止めに動く懸念があった。
Q 法律が変わると派遣社員の働き方はどう変わるのか。
A どの業務に就いている人でも3年ごとに職場を変えないといけなくなる。今の法律では、専門26業務は無期限となっている。法律が変わっても、部署を変えれば同じ会社にずっと勤めることはできる。法律を所管する厚生労働省は「例えば、庶務課から経営戦略課に異動するなど、派遣社員のキャリアアップにつながる」と考えている。
Q なぜ野党は改正案に反対なのか。
A 専門26業務の派遣社員が契約更新されず、職を失うと懸念している。会社側からみると、人を代えれば同じ仕事をずっと派遣社員に任せることもできるようになる。正社員に比べて賃金の低い「派遣社員が固定化する」(民主党議員)との見方もある。
Q 改正案に雇用を安定させるための制度はあるのか。
A 同じ職場で3年働いた人は、派遣先の会社で直接雇うよう依頼することを派遣会社に義務付ける。断られた場合は、次の派遣先を紹介したり、派遣会社が無期雇用したりしなければならない。キャリアアップのための教育訓練も必要になる。悪質な業者を排除するため、厚労省の監視の目が行き届きにくい届け出制をやめて、全て許可制にする。
Q 派遣会社が雇用安定措置に取り組まなかったらどうするのか。
A 厚労省はまず派遣会社に改善するよう指導する。それでも取り組まなければ、許可を取り消す。改正案の成否は厚労省の監督能力がカギになる。厳格に運用すれば、体力の乏しい中小の派遣会社は淘汰され、大手の寡占化が進む可能性がある。